昨日の本屋で

 こちらの街の本屋さんは、どちらも高校教科書の販売がはじまっていて、賑わって
います。本屋さんは、いつもより人を増やして対応をしているのですが、ついでに文
庫本の小説でも買ってくれればもっといいのに。いつもこのくらいの売り上げがあれ
ば、街の本屋さんもやっていくことができるのに。
 なにか新刊でめぼしいものはないだろうかと思って棚をチェックしていましたら、
次のものが目にはいりました。

 平凡社の新刊は、新聞でチェックするくらいでホームページはみておりませんので、
このようなものがでているとは知りませんでした。
もちろん「五足の靴」というのは、岩波文庫にはいっている100ページほどの紀行文
となります。
五足の靴 (岩波文庫)

五足の靴 (岩波文庫)

 森まゆみさんの本は手にして、あとがきをすこし立ち見しただけで、購入すること
はなかったのですが、あの薄い文庫本から、このような本が生まれたのかと思いまし
たです。
 岩波「図書」2017年11月号「こぼればなし」(編集人の坂本政謙さんによるもの)
では、この「五足の靴」をとりあげて、「『岩波文庫で味わう わがふるさと』と題
し、各都道府県にゆかりのある一冊を選んでフェアを実施中です。『五足の靴』は
長崎県の一冊。」とありました。
 坂本さんは、そのころ佐藤正午さんの新作のサイン会などで、佐世保へと足を運ぶ
ことがあって、「五足の靴」に書かれた「佐世保」を紹介していました。
 この「こぼればなし」は、岩波のページで読むことができます。
( https://www.iwanami.co.jp/news/n21905.html )
 岩波文庫「五足の靴」の解説の最後を見ましたら、この作品は「明星」に集う若き
詩人たち 北原白秋、平野萬里、大田正雄、吉井勇、与謝野寛の五人による紀行文で、
東京二六新聞」に連載のあと、纏められることもなく埋もれていたものを、野田
宇太郎さんが戦後まもなく発掘し、昭和35年に修道社からでた「日本紀行文学全集」
に収録されたとありました。
 白秋ゆかりの柳川に「五足の靴ゆかりの碑」ができたことをきっかけに、柳川版の
「五足の靴」が刊行され、それから「白秋全集」にも参考作品として収録されとの
ことです。
 明治40年8月〜9月にかけて新聞に掲載されたものですが、昭和35年になるまで、
ほとんど誰も知らない作品ということになります。それがいまでは岩波文庫に入ると
いうことでも異色の作品ですね。