あわてて読む

 本日は野暮用で外出となりましたが、それにあわせて、いまだ現役で働いている知
人のところをたずねて、しばし最近読んでいる本などについての情報交換でした。
 一人からは、先日の毎日新聞池内紀さんが取り上げられていたので、みてちょう
だいということで、池内さんの「記憶の海辺」を刊行したことを紹介したコラム「論
の周辺」をわたされました。
 それに続いて、自分もこれを読みたいので、図書館に予約をいれましたとのこと。
これは期限内に読み上げて、彼のリクエストにこたえなくてはいけないことで。
 この「論の周辺」には、「池内さんが若き日に情熱を傾けたオーストリアの批評家、
カール・クラウスいついての記述が印象に残る。」とありました。
昨日にも記しましたが、当方にとっての池内さんは、ちょっとかわったドイツ系の文筆
家の翻訳をする方でありました。
 本日に読んだ「記憶の海辺」には、次のくだりがありです。
「あんなにナチスヒトラーを誉めたたえて、トーマス・マンなどの亡命作家たちを批
判していたのが、一夜明けるとコロッと変わって、反戦作家ケストナーや抵抗文学論で
すからね。失礼ながら、この先生方は信用しないで、自分の目で見つけて、それを『自
分のドイツ文学』にしようと思いました。さしあたりは、この方々が目もくれなかった
ユダヤ系の人たちを集中的に勉強することにして」
 池内さんの本で、最初に購入したものは何だろうかなと思っているのですが、どうや
ら、当時の日本ではほとんど紹介されていなかったユダヤ系作家の長篇小説であった
ようです。
 いまでも未読のまま当方の書架にあるエリアス・カネッティの「眩暈」でありますが、
刊行されてすぐに購入、すでに未読45年となりです。1981年にはノーベル文学賞を受け
たカネッティですが、池内さんは先見の明があったといえるでしょう。
 もう一人の知人と情報交換をしましたら、それでは今年はドイツ文学イヤーというこ
とにしたらよろしかろうとのアドバイス。ここまでのところ、ドイツ系のものを途切れ
ずに手にしていますが、これをいけるところまでいってやりましょう。そのなかで、
カネッティ「眩暈」が読めたら最高でありますね。

眩暈(めまい) 〈改装版〉

眩暈(めまい) 〈改装版〉