とうようさんの本 2

 本日も田中勝則さんの「中村とうよう」さんについての本から話題をいただきです。
 まずは、田中さんの本からの引用。
「『ブラックミュージック』を常に擁護してきたとうようさんだが、ヒップホップに
対してはあまり深入りしなかった。行き詰まったソウルに風穴をあけたという点は評
価しながらも、音楽としてはあまり深い関心を示さなかったのは、とうようさんは、
その頃からダンス音楽というものに対する期待を失っていたからだ。その分、『歌謡』
音楽が重要になっていったとも言える。」 
 80年代後半からの話でありまして、田中さんの文章に引用されている歌手は、
インドネシアのエルフィー・スカエシ、セネガルユッスー・ンドゥール、マリの
サリフ・ケイタであります。
 当方も含めて、ほとんどなじみのない面々でありますが、ユッスー・ンドゥール
世界で最も重要な音楽家の一人といわれていて、セネガルの文化英雄であります。
これと同じような位置づけで、テレサ・テンのこともとうようさんはおしているので
ありました。そして都はるみのことも。
 とうようさんの「俗楽礼讃」の最後におかれるのは「都はるみ」さんについてであ
ります。
 とうようさんは、都はるみさんの代表作ともなった「北の宿から」路線に異議を唱
えるのでありました。
「ぼくははるみにはウナってほしかった。だんだんご立派になって行くひばりにウンザ
リしていたからだ。せめてはるみは、フンベツ臭くなどならないで、どろくさくいド
演歌のままでいてほしかった。・・とはいいながら、実はぼくは都はるみをド演歌一直
線の歌手だとは見ていなかった。」
 このあとに、とうようさんならではのはるみ演歌への卓見が続くのでありますが、そ
れは残念ながら省略です。
 この都はるみ論の最後には、ふつうのおばさんに戻ってから復帰したあとについて、
次のように書かれています。
「復帰後の新しいレパートリーはまだ彼女がやりたいものを達成できているとは思えな
い。ワクをぶち破りたい、と言ってたけどそれもまだ模索中だ。・・なお復帰後の録音
では、アニメ『おもひでぼろぼろ』の主題歌『愛は花、君はその種子』(原曲はベット
ミドラーの映画主題歌『ローズ』)がいちばん新しい都はるみを感じさせる。これを
聞けば、都はるみがまだまだ大きな可能性を残しているのは間違いないことだと確信
できる。」
 ベット・ミドラーの映画主題歌『ローズ』は、ジブリの映画に使われていて、それを
都はるみが歌っていたとは、まったく知らなかったこと。
 そういえば、年末にみたNHK紅白という番組で一番驚いたのは、島津亜矢さんという
演歌系の歌手がベット・ミドラー「ローズ」を歌っていたことです。バックには、昨年
までであれば亀渕友香さんが率いていたと思われるゴスペル集団がコーラスをつけて
いたことでありまして、ことしの紅白というのは、こういう形で亀渕さんを追悼して
いるのかと思いましたです。
 ということで、本日は「ローズ」と「愛は花、君はその種子」を聞いておりました。