孤独な抵抗かな 3

 本日も東峰夫さんの「オキナワの少年」を手にしていました。初期の三作をまとめ
たものですが、収録されているのは「オキナワの少年」「島でのさようなら」そして
「ちゅらかあぎ」となります。

オキナワの少年 (文春文庫 ひ 3-1)

オキナワの少年 (文春文庫 ひ 3-1)

 本日は「ちゅらかあぎ」を読んでいました。あと60ページほどで読了となりますが、
この作品を読んでいましたら、東さんの作品に野呂邦暢さんとつながるものを感じま
した。東さんと野呂さんは、ほぼ同年になりますが、芥川賞をとったのは、東さんの
ほうが3年ほども早く、このことを野呂さんがどのように受け止めたかを、どこかに
書いていないだろうかと思いました。(ちょっと探して見たのですが、いまだに見つ
かったおりません。)
「ちゅらかあぎ」で印象的なのは、東さんがあこがれの作家の家のあたりをうろつい
たり、同人誌「文芸首都」に入会しようとするくだりですが、あこがれの作家といえ
ば、井伏鱒二上林暁であったようです。
「何のつもりもなしに電車にのって、井伏鱒二宅を見てきた。黄色い電車にのって新
宿までいき、赤い電車にのりかえて荻窪でおりた。残業もしないでふらっと出たのだ
から、住所もメモしてなかったが、心づもりはあった。」
 駅をおりたところで、書店にはいり井伏全集の年譜をチェックして住所を確認し、
やはり書店にある地図で場所を確認して井伏宅のあるあたりの見当をつけるのでした。
「作家の家を見たって文学勉強には何のプラスもありはしない。それよりも部屋で
じっくり読んだほうがよさそうだった。沖縄から出てくる時ぼくはただ一冊、井伏氏
の『昨日の会』という随筆集を持ってきていたのだ。その中の『おふくろ』がよくて
・・・。」
 これを読みますと、東さんは沖縄からでてきた純朴な文学青年に思うのですが、そ
れほど単純な話ではないというのが、現在の東さんの在り方をみますとわかるのでし
た。