孤独な抵抗かな

 中川成美さんの「戦争をよむ」に取り上げられていた東峰夫さん「オキナワの少年」
を手にしていました。「孤独な抵抗」というのは、中川さんが東峰夫さんについて記し
た文中にあったものです。
 東峰夫さんの本を手にしたのは、久しぶりのことでありまして、せっかくですから
表題作「オキナワの少年」を走り読みしていました。この作品が発表されてから、すで
に45年もたっています。この当時とくらべますと、オキナワはずっと良くなっていると
思いたいことですが、これが書かれた頃の沖縄は、本土復帰前でありました。
「オキナワの少年」から引用です。
「この町はほそながい町だよ。日向にでてきたみみずに蟻がたかるみたいに、軍用道路
に土地をなくした住民が、しゃぶりついてできた町だよ。ぼくはヒクヒク泣きながら町
を横切った。」
 東峰夫さんの作品は、それなりに集めているのでありますが、うかつなことで、本日
になるまで、東さんがフィリピンミンダナオ島の生まれであるとは知りませんでした。
沖縄はあちこちへの出稼ぎ、移民の多いところでありますが、東さんのところもそうで
あったのですね。
 東家は、その後サイパンに渡り、戦況が悪くなった頃に出身地である沖縄に引き上げ
て来たと作中にはありました。帰ってきてみたら、頼りにしていたおじいのところの畑
は日本軍が敵を迎え撃つために作られた滑走路になっていたとのことです。
どちらにしても東家は、戦前は日本軍の、戦後は米軍基地を抜きにしては生活が成り立
たないことがわかりました。
 本日に手にしたのは文春文庫版「オキナワの少年」でありますが、これの解説を書い
ているのは北澤三保さんという作家さん。芥川賞の候補にもなった方でありますが、
以前にブックオフで、この方の本を安価で見つけて、この作家さんが北海道出身とわか
り購入したのを思いだしました。北澤さんと東峰夫さんの接点はどこにあったのであり
ましょう。