月がかわって

 月がかわって岩波「図書」8月号が届きました。これの編集後記「こぼればなし」を
みていましたら、「図書」の顔を2008年1月から2014年12月まで飾っていた宮下志朗
さんによる書物についてのものが一冊にまとまったとありました。

カラー版 書物史への扉

カラー版 書物史への扉

 まとまったことは「図書」掲載の案内で目にしているはずですが、なにせ岩波の新刊
を手にする機会がないせいもあって、これがでていることを忘れておりました。
購入すればいいのでありますが、懐具合が一番、置き場所二番という二つの難問をクリ
アできずでありまして、「図書」8月号を目にして、さてどうするべいかと思っており
ました。
 本日に図書館へといってみましたら、この「書物史への扉」がならんでいましたので、
ありがたく借りてきました。
 カラー版でありまして雑誌掲載の時よりもぐっと見栄えがするようになっています。
さすがに岩波の本であるなと思いました。
雑誌連載時に、拙ブログでもなんどか話題としたことがあったように思いますが、それ
よりも忘れているものがほとんどでありました。
 本日にぱらぱらと開いていて、目に入ったくだりです。
「ふだんは書物などの扉や挿絵を掲載しているのだけれど、今回の主役は、スコットラン
ドの古史に題材をとったウォルター・スコットの小説『伝説モントローズ』の挿絵に使わ
れた柘植の版木。それを木口木版をする家人の所有になる小ぶりな印刷機(『アルビオン
プレス』と呼ばれ、わが家のは1843年製。写真参照)で刷った版画を紹介する。」
 版木が話題になって、それを宮下夫人がプリントしたものが表紙を飾っていたとは、
記憶に残っておりませんでした。
 挿絵を木口版画でいれるというのは、昔の本では珍しいことではなかったのだそう
ですが、写真が発達するにつれ、木口版画の挿絵は姿を消していきます。
「やがて、写真という新しい複製芸術に押されて木口木版は実用としての価値を失い、
アートとして独立していく。発祥の地イギリスでは今も人気があるし、日本でも柄澤
齊など優れた作家が活躍している。」
 木口版画といえば、現代の日本では柄澤齊さんでありますか。それにしても宮下夫人
は、どのような作品を制作されているのか、ちょっと気になることです。