知らないことばかり

 「うえの」2月号を手にすることができました。
 巻頭にはアーサー・ビナードさんによる「取りつく島もない?」という文章が掲載
されています。
 書き出しは、次のようになります。
「『択捉』という漢字がいきなりでてきても、迷わずに『えとろふ』とすんなり読め
るようになったのは、わりと最近のことだ。」
「えとろふ」というのが、なんのことであるのかわかる方はすくないでしょうね。
これはいわゆる北方領土にある島の名前であります。こうした書き出しの文章が発表
されたのは、2月7日が「北方領土の日」ということになっていますので、それにちな
んでいるのかもしれません。(もちろん、月刊誌でありますので、これが書かれたの
は、1月までのことであります。)
 皮肉なこと、この北方領土が、最近に話題になったのは、担当大臣がこの北方領土
にある島の名前を読むことができなかったことによります。(もちろん、ビナードさ
んが、この大臣のことなどを相手に揶揄するわけもなしです。)
 ビナードさんの文章によって教えられたのは、真珠湾攻撃の日本艦隊は択捉島の湾
に集結して、ここからでていったことあったことと、択捉島沖縄本島の二倍以上も
あるということでした。恥ずかしながら、この年になるまで択捉島の湾が、そういう
役割を果たしていたということを知りませんでした。
 ビナードさんは戦争中のこうした過去や、さらにその昔にあった北方諸島における
先住民族への迫害などを踏まえて、つぎのようにいいます。
「『そもそも北方領土アイヌの故郷です』という事実を、日本とロシアの両政府が
共有できれば、この問題の話合いがもう少し深まるような気がする。しかし、それだ
けでは解決には至らないだろう。」
 「北方領土の日」の期間中に開催されている札幌雪祭りの会場では、北方領土返還
要求の署名活動がなされたはずですが、その請願文章には「沖縄が祖国に復帰しまし
た。」とかかれているとのことです。
 祖国に復帰した沖縄の現状を見たときに、ビナードさんは「択捉島国後島、色丹
島、歯舞群島の返還の前提は、日本が独立国家になること。すべての米軍基地の返還
が実現したのち、ロシアとの交渉が進むこと」といっています。
 独立国家といわれる国で、こんなに外国の軍隊が基地を有する国というのはないの
でありましょうか。 
 ちなみに担当大臣がよむことができなかったのは、「択捉島国後島色丹島
歯舞群島」のうち、最後におかれたものですが、今回のことのおかげで、すこしは
認知度が高くなったかもしれません。