長谷川さんの葉書 5

 長谷川四郎さんからいただいた葉書ですが、そのユニークな書き文字も含め、その
ままの形で見ていただくことができれば、どんなにいいことでしょう。書き文字が
文章のリズムを生んでいるところもありますので、このような書簡は写真版で見られ
るのがベストですね。全集などにはいっています書簡集を眼にしましても、その作家
さんがどのような字を書くのかは想像がつかないことです。
 ということで、いただいた葉書のなかにあって当方が一番うれしく思ったくだりで
あります。
 消印は78.10.2となります。
「赤ん坊は元気ですか。このあいだ堀部安兵衛の奥さんが尼さんになってからの話を
話を聞き書きしたというのが柳田国男の涕泣史談の中で言及されており、それに赤ん
坊は泣かせるだけ泣かせるのがよしとあったそうで、おもしろく思いました。
 小生は酒をやめ、大いに養生しまして、ほんの少しずつ体がよくなったようです。」
 ちょうどこの年5月に、当方に子どもが生まれたことを伝えてありました。10月に
葉書をいただいたとき、それを話題にしていただきました。ありがたきかなです。
当方は、今にいたるまで柳田国男の「涕泣史談」は知らずでありまして、この時から
40年近くもなってからちくま文庫柳田国男全集で「涕泣史談」にあたっているので
ありました。
 そういえば、長谷川四郎さんは「柳田国男への関心持ち続けた人」でありました。
 今年の終わりに、長谷川四郎さんのことを話題とすることができて良かったことで
あります。たまたま昨日は、長谷川四郎さんの奥様の祥月命日でありました。
四郎さんが倒れて入院されてからは、奥様からお手紙をいただくことになりました。
それは四郎さんが亡くなってからも続きましたが、四郎さんから「赤ん坊は元気です
か」と書いていただいた子どもたちは、奥様に可愛がってもらいました。