とりあえず読了 2

 チャトウィンの「ウィダーの副王」をとりあえず読んで、次に何をしたかといえば、
訳者による解説を読んだのであります。
 たとえば、これまでずっとこの作品は「ウィダの総督」という邦題で知られていた
のですが、これがどうして「ウィダーの副王」となったのかであります。
 「副王」という言葉は、ほとんど目にすることがありませんですね。そう思って英
語辞書をひいてみましたら「viceroy」という言葉には、「副王、総督、太守」とでて
いました。
 ということは、これまでの「総督」というのが、ちょっと作中人物に与えられた地
位の意味合いとは違うということですか。
 この主人公は、公職にはついていなかったということで「総督、司令官」にはあた
らなく、「副王」という呼び方もいかにも言い過ぎと、解説のなかで旦さんは言って
います。(このへんは、主人公とそのモデルとなった人物とが同一視されます。)
「王子がゲゾ王として即位すると、デ・ソウザ(主人公のモデル)は特権的な地位を
あたえられて、以前から奴隷搬出港として有名だったウィダーにおける王の代理人
存在になった。これが本書の題名の由来だろう。ただし、ヨーロッパ人(白人)との
奴隷貿易担当の大臣(ヨヴォガン)がウィダーには別にいたため、政治的な権力を予
想させる『副王』という呼び方はいかにも言い過ぎで、王が送ってくる奴隷(捕虜や
犯罪者)の中から売りやすい奴隷をチョイスする第一選択権のようなものを与えられ
たというぐらいのことに考えておいたほうがいいらしい。他にもブラジル人や
ダホメー人の奴隷商人はウィダーにいたので、独占販売権ということでもなかった
ようだ。」
 旦さんは、チャトウィンがタイトルに「viceroy」という言葉を使っていることや、
ウィダーにおいて奴隷ので独占販売権をもつ」と記していることに首をかしげ、
「viceroy」の訳としては王から大きな権限を付与された「総督」より日本語では
なじみ薄く、それだけ役割をイメージしにくい「副王」(この言葉からは、かっての
野球の選手か自伝の作者くらいしか思い浮かべません。)を採用したのでしょう。
 この作品は映画化されたのですが、映画のタイトルは「コブラ・ヴェルデ 青い
蛇」というもので、主人公が「コブラ・ヴェルデ」と呼ばれたことによりますが、
これって原作でもそうであったでしょうか。