読書アンケート特集 3

 昨年に続いて、加藤幹郎さんが文遊社からでている「野呂邦暢小説集成」をあげて
います。
 ちなみに昨年にあげていたのは小説集成の1,2であります。これの書き出しは、
次のようになっています。
「私が初めて野呂邦暢というすぐれた日本人小説家をしったのは、1995年に刊行された
分厚い『野呂邦暢作品集(文藝春秋)を通してでいた。・・・今年、刊行されたこの
分厚い二冊の『野呂邦暢小説集成1,2』はとりわけ充実しています。しかも解説者
たちが野呂同様、芥川賞その他を受賞しても東京文壇におもむかない長崎市在住作家
や、当時、野呂とともに諫早市在住であった文芸評論家ですから、その点でも大変傑出
した小説集成となります。」
 昨年に、この「野呂邦暢小説集成」を取り上げたのは、加藤幹郎さんお一人ですから
これだけでもうれしくなってしまったことです。
 さらに今年も「小説集成4」を取り上げてコメントをつけています。
「文遊社は『野呂邦暢全集』(ママ)を昨年(2014年)度末、四巻目の復刊をしていま
すが、全巻みごとな選択構成をしていて、長崎市という日本の<江戸期イデオロギー
における特異な場所で生まれた、この芥川賞受賞作家は早期に亡くなりますが、彼が
長崎で生まれ長崎で死ぬまでのあいだ執筆活動をつづけるがゆえに、東京に行くすべて
の小説家たちの人間精神表象とは画然と変様する、すばらしい小説集が今回も収録され
ていて、本当に文遊社は、すばらしい仕事をしつづけています。」
 加藤幹郎さんは、生まれが長崎市とありますので、同郷となる作家へのオマージュで
あります。ちょっと気になるのは、昨年はちゃんと表記をしていますのに、今回は、
野呂邦暢全集』とか、「四巻目の復刊」とは、ちょっと首をかしげることです。
それはともかくとして、地方で活動をする作家さんについては、無条件で応援をしたく
なることです。
 文遊社は、ほんと小さな出版社でありますが、今年のアンケートには「曽根中生自伝
人は名のみの罪の深さよ」もあがっていまして、文遊社は、すばらしい仕事をしている
というのに納得です。