チャトウィン元年 3

 今年は、ブルース・チャトウィンのものをはじめて読みました。
 チャトウィンは、「ウッツ男爵」を翻訳した池内紀さんが自分と同じ生年といって
いますので1940年生まれとなります。亡くなったのは1989年のことです。
(Bruce Charles Chatwin, 1940年5月13日 - 1989年1月18日)
 それじゃ池内さんはとみると(いけうち おさむ、1940年11月25日 - )となります。
 1989年というと、篠田一士さんにも関係あるかです。
(しのだ はじめ、1927年(昭和2年)1月23日 - 1989年(平成元年)4月13日)
 なんの意味もないのでありますが、ブルース・チャトウィンさんは、生年は池内さん
と、没年は篠田さんと同じとなります。「ウッツ男爵」は1988年に発表された作品で
ありますので、この作品を篠田さんは読むことができたのかなと思います。
 篠田さんの「新編 現代イギリス文学」の解説は富士川義之さんによるものですが、
そこには、次のようにあります。
「『旅行記について』と言えば、篠田一士は余程イギリスの旅行記が好きだったようだ。
86年から『学鐙』に連載されながら惜しくも未刊に終わった『現代イギリス文学ふたた
び』で取り上げているブルース・チャトウィンとか、フィリップ・グレイズブルックと
かいった旅行記作家たち、そういう現代イギリス文学の専門家たちのあいだでさえも
話題にされることの少い、旅行記作家たちの作品に広く親しんでいた。七〇年代を代表
旅行記という評判の『パタゴニアにて』なども逸早く読んでいて、最近の旅行記作家の
なかでブルース・チャトウィンが出色の存在であることをにこにこ笑いながら話して
いた情景がいまも目に残る。そんなときの篠田さんはじつに嬉しそうだった。
有望な新人作家を自分で見つけたことが嬉しくて堪らないといった風情に見えた。
『きみブルース・チャトウィンを知っとるかね』と話を切り出したときのいくぶん得意
げで茶目っ気のある彼の表情が忘れがたい。」
 いかにも篠田さんらしい逸話であります。