現代新書50周年 2

 講談社現代新書で最初に購入した一冊というのは、渡辺一夫さんの「私のヒューマ
ニズム」であるはずですが、これを購入したのはいつのことだったでしょう。
渡辺一夫さんのもので、最初のほうに購入したものとして「寛容について」があるの
ですが、それよりも早いはずでありますが、今は確認のしようがありません。

 ひさしぶりで、渡辺一夫さんの本を手にして、有名なエッセイ「寛容は自らを守る
ために不寛容に対して不寛容になるべきか」のところをのぞいてみました。この文章
は1951年(当方が生まれた年か。)に発表されたものですが、この文章が書かれた
背景について、1967年、渡辺さんは次のように記しています。
「1950年に朝鮮戦争が勃発した結果、我が国の経済界は、所謂『特需』なるもので活気
を呈してきた。その頃、この雑文は書かれた。その時分から、何か歯車の軋むような、
ぎりぎりいう音が一入聞え始めたように思う。・・・・
 現在、佐藤栄作首相も、『寛容』を説かれる。しかし、首相が『有言不実行』の癖を
持って居られるように思えてならないから、同首相の『寛容』に対しては、警戒的な
気持ちを抱かざるを得ない。ゲシュタポの長官でも、『寛容』という言葉を、にやにや
笑いながら脣に乗せられたからである。」
 佐藤栄作首相が「寛容」という言葉を口にしたことに違和感を抱いたとあるのですが、
それとくらべると、その親戚筋にあたる現在の首相は、もっと正直でありますので、
「寛容」なんてころを口にすることはありません。それこそ「不寛容」が、モットーで
はないかと思えるくらいでありまして、そのせいもあってか、「不寛容に対して不寛容」
になるべきかであります。