馬淵美意子のすべて

 昨日にちょっとふれた「馬淵美意子のすべて」という本についてでありますが、この
本のことを知ったのは「みすず読書アンケート」でのことでありました。
 今から40年もむかしのことになります。この本をあげていたのは誰であったかと確認
をしてみましたら、宇佐見英治さんでありました。
「みすず」72年1月号に掲載の「読書アンケート」であります。この時代は、今のように
1・2月合併号とはなっておらず、しかもアンケートは20ページくらいの掲載でした。
 ちなみに合併号で、「読書アンケート特集号」となったのは、1983年のことでした。
(当方は、1971年から「みすず」読書アンケート掲載号をすべて持っているようで、
以前に写真におさめてこれをブログにアップしたように思っておりましたが、これは
写しただけで掲載はしていなかったようです。以下のところにありました。
http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20110219
 宇佐見英治さんは、次のように記しています。
「『馬淵美意子のすべて』 馬淵美意子著 庫田叕編。求龍堂刊(1971年)
 馬淵美意子さんは生前、創元社から一冊の詩集を出したきり、1970年74歳で病没した。
四十歳すぎて画家から転じ、詩を書き始めた。女性では恐らくこれほど知性の高さを
感じさせる詩人はいないであろう。散文も腰が強く、清冽ですばらしい。」
 編者の庫田叕さんは、もちろん画家でありますが、本の装丁なども手がけられたように
思います。たしか筑摩書房の全集かの装丁をしていたはずと、確認を試みたのであります
が、これは本日の調査では検証できませんでした。
 馬淵美意子さんが亡くなったのは1970年74歳の時ですが、そのとき庫田さんは63歳
とありますので、ひとまわりほども年の差があったのですね。親の反対を押し切っての
結婚であったとありますが、馬淵さんが亡くなった翌年の誕生日にあわせて刊行された
のが「馬淵美意子のすべて」となります。
 当方が入手した本には、「謹呈」という二つ折りの紙がはいっておりまして、それを
開くと「御挨拶  庫田叕」という文章があります。
「この出版は、故人に対して今の私に出来るたった一つの贈物であり、これ迄の私自身
の非力への償ひでもあります。遺言には、手文庫の中のものと手紙類の一切を焼却のこ
ととありましたが、通夜の際、草野心平並びに歴程同人諸君と相談の結果、作品のすべ
ては、既に作者を離れて独自に存在するものと判断して、この出版を決意致しました。」