しんとく問答 5

 後藤明生さんの小説「しんとく問答」を手にして、「俊徳道」からの連作を読んで
います。
「贋俊徳道図絵」というのは、小説「俊徳道」の続編ともいうもので、三ヶ月後に雑誌
に掲載となったものです。
「小説『俊徳道』の初老の男は、週三回、俊徳道駅に停車する鈍行電車で大学に通って
います。下車するのは俊徳道駅の次の駅です。通いはじめて六年になります。その間
ずっと俊徳道のことが気になっているのですが、ある日、『布施市史』に書かれた俊徳
街道を再現しようと、天眼鏡片手に数冊の大阪地図と大格闘を演じた挙句、どうやら
架空=幻の俊徳道を再現します。」
 「俊徳道」という作品を作者自らが要約をしますと、上のようになります。
 初老の男とありますが、後藤さんは1930年生まれで、この連作を発表したのは60半ば
にさしかかろうとしている頃のことです。
 「幻の俊徳道」でありまして、今に残る街道のような道ではなく、普通の道をあみだ
くじをたどるようにして、「俊徳道駅から四天王寺南門まで」歩いていくことになります。
これが地図上で計測しますと約6.47キロメートルとのことです。
 この道々で俊徳丸にちなんだと思われるものなどを写真におさめて、それを話題に幻の
俊徳道紀行を説明するというのが「贋俊徳道図絵」であります。
 この作品では、目についたものについての具体がのってくるのですが、当方は気になっ
たのは、後藤さんのお住まいから近鉄本町駅にいたる道筋などであります。
谷町四丁目で降りてエスカレーターに乗り、改札口を出て地下道を右折、次に左折して
階段を登り、約50メートル先の交叉点を渡ると難波宮跡公園です。その西北入口から
入り、公園を斜めに横断し、私がいつも利用している金網の隙間を擦り抜けると、一分
足らずで私のマンションに着きます。」
 そうか、後藤さんはこのあたりにお住まいであったのか。