今年、話題の本 2

 当方はけっこうええかっこしいの、まじめ人間を装っておりましたので、ビニ本
か自販機ポルノにはほとんど縁がないことになっていました。
 コミック雑誌もエロ系もまったく疎いのですが、そうした雑誌を作っていた人たち
の話を読むのはたいへん好きでありました。一番早くに読んだのは、末井昭さんの
ものだったでしょうか。自販機ポルノとくらべると、末井さんがつくっていたもの
ほうが、もうすこし合法的であったかもしれません。とはいっても「写真時代」と
か「ウィークエンドスーパー」ですから、家族の前では開くことのできない雑誌で
ありましたね。「写真時代」は、天才荒木の写真と、トマソンについての調査が
続く赤瀬川原平さん路上観察ページが楽しみでありました。立ち見はするが購入す
ることはなく、「トマソン」が単行本となったときに、やっと購入することができま
した。
 こうした末井さんの関わるものとくらべると、亀和田さんのつくる「アリス出版」
のものは、ほとんど目にすることがなかったようです。
会社の名前としては「アリス出版」のほうが上等そうであるのですが、この会社が
できた1976年ころは、「不思議の国のアリス」がブームであったのですね。
「自販機に納入される雑誌の九割には、アリス出版の社名がクレジットされていた。
アリス出版。懐かしいなあ。前の会社で先輩だった社長と私、そしてまだ十代だった
経理の女の子の三人で76年に始めた会社だった。
 もっとも実権を握っていたのは、自動販売機を保有していた親会社で、私たちは
その出版製作部門を担当しているにすぎなかった。・・・・
 会社に余裕が出来たころ、社長が『劇画誌も出してみない?』と私に勧めてくれて
創刊したのが『劇画アリス』だった。一流のマンガ誌だとできないような冒険的で
挑発性に富んだ雑誌を私は作りたかった。エロさえ描いてあれば、あとは何をやって
もOK。そんな刺激的な誌面作りを始めて、一年もしないうちにマンガ・マニアたちか
らの反応がかえってくるようになった。」
 しかしそれにしても、マンガ・マニアというのは、熱いことでありますね。
こうしたマニアがいるから、作家も育つのでしょう。なんとなく、エロの世界は、
マイナーリーグのようであります。これは映画の世界であればピンクとかロマン
ポルノでありまして、ここからでた監督たちが、五社体制崩壊後の映画監督として
光があたることになるのですが、劇画アリスからは、どのような作家がでたので
しょう。こちらも当方は不案内であります。