町から本屋が

 昨日に届きました「本の雑誌」12月号の特集は「町から本屋が消えてゆく!?」で
あります。本屋が姿を消していくのは、全国的な傾向でありまして、12月特集号で
取り上げられている「神戸・海文堂」ほどであれば話題にもなりますでしょうが、
ひと月に何店か閉店となるといわれるほとんど店は、気がついたら閉まっていたと
いうことになるようです。
 この号の特集で永江朗さんが、次のように書いています。
「町の本屋が立地する『町』そのものが、この30年で激変した。地方の中堅都市は
ほとんど例外なく駅前商店街が寂れてしまった。消えたのは本屋だけじゃない。
レコード屋も文房具屋もなくなった。定食屋は牛丼や餃子のチェーン店になり、喫茶
店もチェーン店になった。独立系の小売店や飲食店という業態そのものが、小さな町
では存続できなくなってきたのだ。」
 このとおりでありますね。町そのものが機能を維持していくことができるのかどう
かという瀬戸際であるようです。高齢者にとっては、自家用車を運転できるかとか、
ネットで注文することができるかということが、生活の質を確保するのに必要である
ようです。
「自動車は弱者のものである」と喝破した人がいましたが、ネットもまた弱者のもの
でありますからして、高齢者こそネットになじまなくてはいけないことです。
 永江さんの文章から、もう一カ所の引用です。
「ある元書店主は『本屋をやめてよかったよ。経済的にも肉体的にも精神的にも楽に
なった」と笑っていた。町の本屋がなくなるというと、悲しい、淋しい、残念だとい
うトーンで報道されることが多いけど、やめてハッピーになった人も少なくない。
本屋さんの苦労も知らずに『やめないで』なんていうのは身勝手だ。」
 当方のいとこには、かって農業に従事していた人がいるのですが、彼の代で三代
続いた農家を廃業し、祖父の代からの農地も手放してしまったのです。そのことを
当方の母は、非常に残念がっていたのですが、廃業してもすぐに仕事が見つかって
路頭に迷わなくて済んだのは、いい時期にやめたからで、あのまま続けていても、
ただただ借金が増えて、そのあとの仕事も見つからなかっただろうと言う人もいて、
事業を廃するタイミングは、実に難しいことであります。