本日 手にした本

 さて、本日の話題はと思って手にしていたのは、森嶋通夫さんの次のものです。

なぜ日本は没落するか

なぜ日本は没落するか

 これはいまでは岩波現代文庫に収録されていて、容易に手にすることができる
ようですが、当方が手にしているのは、それの元版です。
 当方などは、外国にでることなく、日本のメディアが報じるものだけしか目に
しないのでありますが、外側からみますと、それはずいぶんと不思議に映るので
ありましょう。
「私の祖父や父や私自身、その枠組みの中で生活し、喜び、祝い、苦しみ、かつ
悲しんだ日本という『民族国家』はやがて力を失い、他の国同様、広域共同体の
中に吸収されてしまうであろう。そういう時がいつ来るか断言はできないが、
ヨーロッパでは次の世紀の前半、東アジアでは後半に来ると考えるのが穏当である。
いまは過渡期にあるのだ。
 だから愛国心も過渡期にあると考えてよい。・・これからの若い人達は、共同体
の中にいき、それを生かすために生きるという時代への入口をやがては経験しなけ
ればならない。そういう子供たちを教えるのだという気持ちを持てば、子供たちに
はどこに行っても通用する真実を教えておかねばならないという気を教師たちは
もつ筈である。」
 これは「新しい歴史教科書をつくる会」の動きを批判してのくだりにあるものです。
森嶋さんは、今後の日本は共同体化するしか生きる道はなく、それは東アジアでの
話とあります。
 数日前にも国連事務総長となっている韓国の元外務大臣が、日本の歴史認識に対し
て異を唱えていましたが、森嶋さんの意に反して、どうやら、東アジアで共同体が
結成されるときには、日本だけははずそうということになりそうであります。
「日本人や日本政府が面子という右傾的心情にわざわいされて、歴史の共同理解を
拒否するだろうから、そうすれば共同体形成という私の日本救済策は吹き飛んでし
まい、日本は墜ちるところまで墜ちていくであろう。その結果、日本は二度栄え、
二度間違いをした国として、世界の人々に記憶されることになるだろう。」
 この文章が書かれたのは1999年頃でありますが、今読んでも違和感はなしであり
ますね。
「決定的に戦争で敗けたアメリカには日本人は競争心を持たないが、アジアの諸国
には依然として競争心を持ち優位に立っていると心底思っている人がいる。
もしそうなら日本人はアメリカに対してはナショナリストではなく、アジア諸国
ナショナリストとして対応する。」
 まさに脱亜入米であります。