未読率の高い著者 4

 金井美恵子さんの本は、小さなダンボール箱に一つでははいりきらないくらいは
持っていると思いますが。これは小説とエッセイと雑文集からなりますね。
雑文、エッセイはわりと目を通していて、小説は読めていないのが多く、特には句読点
が少なくて、実験的なものはいけませんです。なかなか読めないぞと思いながらも買い
続けているというのは、重要な作家だと思うからですね。
 当方は、小説を読むときには、どうしてもストリーをおっかけてしまうので、筋の
ない前衛的な小説は、わけがわからなくて、お手上げとなります。金井美恵子さんの
半分ほどの作品は、いわゆる昔風の小説ではありませんので、これを読み通すには
けっこうつらいものがあります。
 なんとか読むことができるのは、「目白四部作」とか「恋愛太平記」のような作品
であります。これらは文庫本となっていて、四部作は河出文庫でありますが、なんと
なくこれの本文の組かたが好きになれなくて、「文章教室」でありましたら、かっての
福武文庫版がよろしであります。
 それよりもなによりも、当方は金井美恵子さんの雑文がすきでありまして、金井さん
の雑文集こそ、文庫に向いていると思っています。すこし意地が悪くて、小気味よいと
いうのが金井さんの文章です。日頃から、あちこちに気をつかって生活をしている、
当方にとっては、その意地の悪さが自分にさえ向かってこなければ、拍手をしながら
読んでいるのであります。
 今回のエッセイ・コレクションの版元は平凡社でありますが、本当でありましたら、
平凡社ライブラリーにいれることで、コレクションとしてくれたらよかったのにです。