いやな感じ

 昨日の新聞広告をみていましたら、「メディアで話題沸騰&大増刷」とあって、
女優が書いて発表した有名な小説家との日々の手記がのっていました。
「1993年1月、ノーベル賞候補の文学者は、女優の自宅で倒れ、還らぬ人となった。
二人の愛は、なぜ秘められなければならなかったのか?」と広告にはあります。
 この作家の作品は、ほとんど読んだことはないのでありますが、戦後を代表する
方のお一人でありましょう。そうか、亡くなってから、すでに20年もたったので
ありますか。この作家が、この女優さんと暮らしていたというのは、けっこう
知られていたように思います。すくなくとも、当方の記憶には残っておりました。
 亡くなってから20年でありますので、これを区切りとして女優さんが手記を発表
したとしても、よくぞこれまで発表せずにがまんしていたことと、いっていえない
こともないのですが、まあできれば、発表せずに秘めていたほうがよかったように
思えることです。
 宣伝文句には「日本文学史を書き換える衝撃の手記」とありますが、このコピー
があたっているのがどうかはわからないものの、これが売れることによって女優さん
の立場がよくなるわけでもなく、どちらにしても彼女は敵を増やすだけではないか。
 このような書名にしたのも、宣伝文句を考えたのも出版社のほうなのでしょうが、
いかにもきわもの出版のようで、いやな感じでありますね。
 作家の創作活動を支えていたのは、自分であるという思いが強くあるでしょうか
ら、それをなんとか残していきたいとすれば、敵を増やすような手記ではなく、
もうすこし違った方法があったでしょうに、それじゃ売れないにしても。