レコードのある部屋 2

「仙台が親戚」様から「『レコードのある部屋』はとても美しい本で、この本の「後書
き」も良いです。」と書き込みをいただきました。
 この本の元になったのは、「ステレオ・サウンド」というオーディオ雑誌で、これは
いまだ健在のはずであります。書店で平積みされている表紙を眼にするだけですが、全盛
期とくらべますと、ずいぶんと薄くなったなとは思いますが、この手の雑誌が、次から
次へと姿を消しているなかで、刊行が続いているだけでも喜ばしいことです。
 それはさて、三浦淳史さんによる「レコードのある部屋」の後書きであります。
「 自分が雑誌の注文で書いたものが本になろうなどとは夢に思ったこともなかった。
それが、ある日突然に、思いもよらないことが起こった。大阪から、セピア色の美しい罫
のはいった原稿用紙にしたためられた、手慣れた(skillfulの意)達筆の手紙をもらった
のである。他人の手紙を無断で引用するのはいいことではないけれど、間接話法に直す
と、フィーリングまで消えてしまうように思われるので、その一部を引用させていただく
と」とありまして、このあとに湯川誠一さんからの雑誌連載の文章を連載完了後に上梓
刊行させていただきたいとの依頼に続くことになるわけです。
 この手紙を受けての三浦淳史さんの反応です。
「わたしにとって青天の霹靂、初めてのことだった。イギリスでは、楽譜出版社の
エディターが演奏会で気に入った新人の新作にゆきあたると、直接話をつけて出版すると
いうことを聞いていたので、何かオーソドックスなプロセスで自分の本が出るという予感
がして、嬉しかった。
こういうことで、湯川書房の社長湯川成一氏からディスカバーされて、本になったこと
を、まず感謝しないではいられない。」
 ちょうど湯川書房が、限定本から一般書へと進出したころのことでありまして、新しい
企画を検討していたときのことですね。
 最近の出版においても、このようなことはあるのでしょうが、かっての湯川さんのよう
に「美しい罫のはいった原稿用紙にしたためられた、手慣れた達筆の手紙」で依頼する
編集者なんてどのくらいいるのでしょうか。