最近文庫となった、次のものを購入です。
- 作者: 丸谷才一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2013/03/01
- メディア: 文庫
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ます。当方は、いまだ学生でありましたが、丸谷才一さんが書くものは追いかけてい
ましたし、これに収録の「へにける年」は傑作であると誰かがほめていたのを見て、
購入しました。すっかり忘れているけど「へにける年」は読みました。
この本を読んで、今も記憶に残っているのは「あとがき」にある次のくだりのみ。
「わたしが國學院大學をやめた年の春、彼一流の優しいいたはり方で、野坂昭如が
山陰へ連れ出してくれたとき、皆生の宿で、とつぜん隠岐へゆかうといふ話になった
のである。あのときわたしは、後醍醐さんのほうはともかく後鳥羽院には縁がある
から、といったのではないかしら。・・・
あの島でわたしがいちばん感動したのは、陵の隣の、後鳥羽院を祀る隠岐神社の花
ざかりにたまたま出合ったことである。あの満開の桜は『ながながし日もあかぬ』と
言ひたいくらゐきれいだった。
わたしはこの景色を『笹まくら』に取入れることにして、徴兵忌避者と家出娘とに
隠岐神社で花見をさせたのだが、あとで気がついてみると、野坂も『受胎旅行』の
なかで、どうしても子供を授からない夫婦にこのお宮の花を眺めさせてゐた。」
次のくだりと記しましたが、覚えているのは、野坂と隠岐旅行にいって、それを
野坂が「受胎旅行」という作品で取り入れているということくらいでありました。
あとがき(もちろん最初の版にあるものです。)には、「かういふ思ひ出話をいち
いち書きつけてゐてはきりがない。」とありますが、当方は、このような思い出話し
が楽しいのでありました。
この文庫本の元となった第二版がでたのは2004(平成16)年となりますが、この
時は、読めそうにないと思い、購入しなかったのであります。文庫になって解説まで
もついて、これは文庫としては値段が高いけれど、中身はそれにみあったもので
ある意味お買い得でありましょう。なんといってもすごい時間がぎゅっとこの中に
凝縮されているのでありますからね。