ボリス・パステルナークが日本でどのくらい読まれているのかわかりませんが、
日本で読んでいる方のほとんどは日本語に訳されたものを通じてでしょう。
その時の翻訳は、詩であれば、ほとんどが工藤正廣訳でしょう。
ただし小説に関しては、まったく事情が異なって、代表的な小説「ドクトル・
ジヴァゴ」だけは工藤訳が着手されているという話は伝わってくるものの、流通し
ているのは時事通信社からのものと、その後の江川卓訳の二種類でありました。
先月に「みすずアンケート」にありましたイギリス文学者 橋口稔さんの次の
コメントを引用したことがありました。
「今は、読みやすいように新しい翻訳をだすことが流行しているようであるが、
古い訳をじゅうぶん参考にして、よい訳にするべきであって、そうするならば、
既訳との共訳のようなものになるであろう。欠点のない、まったく新しい訳が
できるなどということは考えられない。」
これは今回の工藤訳「ドクトル・ジヴァゴ」にもあてはまるのかもしれません。
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切れたことも出版の後押しをしたものかもしれませんが、これまでも未知谷さん
は、パステルナークの詩集をたくさんだしていますので、まあいいかです。
工藤正廣さん訳による最初の「パステルナーク詩集」は「わが妹人生1917年夏」
でありました。これが、ウィキペディアには、以下のように記載されていますが、
1972年に刊行された鹿砦社版の翻訳は工藤正廣さんでありまして、2000年の未知谷
版はその復刊となります。
「詩集『我が妹 人生』(Сестра моя ― жизнь, 1922年)
わが妹人生1917年夏 ボリース・パステルナーク詩集 工藤幸雄訳 鹿砦社 1972
わが妹人生 1917年夏 ボリース・パステルナーク詩集 工藤正廣訳 未知谷 2000.4」
当方は、特にロシア文学が好きなわけではなく、詩に強い関心があったわけで
もないというのに、どうして工藤正廣さんの仕事に注目をすることになったのか
であります。