文芸ブルータス 5

 「文芸ブルータス」といいながら、とりあげる話題は昨日の後半から引き続いて
en-taxi」37号に掲載となった重松清さんの「また次の春へ」であります。
 小説でありますからして、これは架空の町の話ではあるとは思いながらも、細部
でひっかかってしまったりします。「だから小説だっていったでしょう。」といわ
れそうですがね。
「北海道のMという町の観光振興課で、・・北海道の南部に位置して、人口は二万人
ほど。津軽海峡に面していて、主な産業は水産業林業。スズランが町の花。
町の樹はオオヤマザクラ」とあるくだりと、「新千歳空港から高速バスに乗り込む
ときに電話をいれておいたので、バスが到着する時刻にあわせてロビーにでてきて
くれた。」というところではてなです。
 津軽海峡に面してとなると、ほとんどそれらしい町はないのですね。津軽海峡
ら、すこし離れたところには人口二万人ほどの町はありますが、人口二万人という
のは、平成の大合併で誕生したところで、それ以外の町は1万人を切るとことばかり
です。
 新千歳空港から津軽海峡に面した町へ高速バスで移動とあって、これはちょっとね
と感じました。津軽海峡に面した街で一番大きいのは函館ですが、千歳空港からの
高速バスは、ここへもいっておりません。函館には空港がありますから、よほどで
なければ東京から「津軽海峡に面した街」へといくのに、わざわざ遠くなる新千歳便
を利用するということはないと思うけど、なにか他にわけでもあったでしょうか。
どのようにいってもいいけど、時間をもてあましている主人公でもないようです
からして。
 忙しい重松さんのことでありますから、この短編のためにモデルにした町へと
現地調査をするなんてことはないのかもしれませんが、へんに細部が具体的に書かれ
ていたりするので、それなら、このへんはどう説明をするのかなと。
 たぶん、北海道のあちこちの町での取材が、このMという町のなかに融和している
のでしょうが、津軽海峡に面した街というよりも、もっともっと北にある町にふさ
わしいエピソードもあるように思いました。
 それも含めて、楽しく読みましたが、この作品を読まれる方は新千歳空港から
津軽海峡に面した町に高速バスでいくことはできないと知っておいてくださいです。