それにしても 2

 朝日新聞の14日朝刊1面の丸谷才一さんの訃報記事は、出来がよろしくないなという
のが昨日の話であります。丸谷さんとのつきあいがもっと密な時であれば、訃報記事
であっても、もうすこしましなものであろうと思うのですが、これはその時に記事を
つくる必要がなかったのですから、勝手な思いこみです。
 今回の訃報記事では毎日新聞がダントツによろしいのですが、最近までの毎日新聞
読書欄での関わりを思うと、これは当然のこと、つきあいの深さが違います。
 本日は丸谷才一さんを追悼する意味で、1972年刊行の河出書房「新鋭作家叢書」の
丸谷才一集」を手にしています。いまから40年前にでたものですが、これに収録の
作品は「笹まくら」と「贈り物」で、付録のように「笹まくら創作ノート」がありま
す。この集の解説は「山崎正和」さんでありまして、この40年後に、山崎さんは朝日
新聞に丸谷さんの訃報に接してのコメントを寄せています。
 ここでは、山崎正和さんの丸谷才一集に寄せた解説冒頭から引用です。
「あらためて丸谷才一氏の『笹まくら』を読みかえして、私はこの作品が、戦後文学
史における記念すべき事件のひとつであったという印象を新たにした。これは発表当時
もっと広範な評価をあたえられてよかった秀作であり、今後とも繰り返し再評価が重ね
られて行くべき問題作であることは疑いがない。
 何よりも特筆すべきことは、『笹まくら』が言葉の厳密な意味において、日本の
『戦後』文学と呼び得る数少ない作品のひとつだということである。」