創業40周年 15

 谷沢永一さんの「紙つぶて」には、「内容見本の活用」という一章があるのですが、
ここには、「本は買えなくても内容見本で勉強になる」というくだりがあります。
 ここ数日にわたって綴っている駄文などは、まさに「本は買っていないのだけど、
小説も読んでいないのだけど、内容見本を参考にして」という話であります。
 当方は印刷物が好きで、一度集めたものは、新聞と広告ちらし以外は、なかなか
棄てることができないことから、何十年も前の内容見本などが保存されていたりする
のであります。(先日にTVをみていましたら、古い国産自動車のカタログのコレク
ションを評価するというのがあって、保存状態のいいものには、けっこうな値段が
ついているとありました。古本のカタログでも、本よりも全集の内容見本のほうが
値段がついていたりしますが、本当にそうかなとは思うものの、残っていないのは
内容見本のほうでしょうね。)
 国書刊行会の「ラテンアメリカ文学叢書」の内容見本「ラテンアメリカ現代文学
のために」は、その時点ではラテンアメリカ文学の世界を知るためのパンフレットの
ようなものとなっていて、極めて貴重なものでありました。その後にラテンアメリカ
文学世界から、ノーベル賞作家が誕生して、雑誌なども積極的に取り上げるように
なってはいるのですが、それもこれも、まとめて紹介したはじまりは、この叢書に
あって、叢書を買うことが出来ない人は、内容見本を見ることで、今も確認をする
ことができるのです。
 この内容見本を見ますと、日本のスペイン語翻訳家たちが、日本における南十字
星叢書を作ろうとした意気込み(ヨーロッパ経由でなく、ラテンアメリカ大陸から
直接受け入れる。)が感じられます。
 国書刊行会がだしている内容見本で、当方が一番驚いたのは、実はこのラテン
アメリカ文学叢書のものの一ヶ月ほど前にでたものであります。
 これも「本は買えなくても」の見本です。77年5月ころの話でありますから、すで
に当方は就職をしていましたが、なんといってもその本の定価は16,000円という
値段でありました。一冊にまとめられた翻訳小説ですが、こんなに高いものは
売れるのかいなと感じました。
 この時代に学術書でない一般書で10,000円を超える定価のものはほとんどなく
て、その少ない例外となる本は、新刊であってもガラスケースにおさまるか、
踏み台を使わなくては手の届かない書棚の上のほうに置かれていました。
そうした一冊は、クルチウスの「ヨーロッパ文学とラテン中世」みすず書房であり、

ヨーロッパ文学とラテン中世

ヨーロッパ文学とラテン中世

あとの一冊がこれでしょうか。
巨人

巨人

 これはあとにでた版でありますが、78年に刊行された元版が16,000円でした。