創業40周年 16

 国書刊行会からでた内容見本で驚いた話であります。
それは1977年5月にでたものでジャン・パウル「巨人」の内容見本でありました。
これはこのようなスタイルでした。

 先日に書影をかかげた「ラテンアメリカ現代文学」のものと同じような雰囲気であり
ますが、こちらのほうがわずかに縦長となっています。中綴じの小冊子を開いてスキャン
したものですので、写真の左側が表紙となり、右が裏表紙です。
 この内容見本のタイトルは「ジャン・パウル古見日嘉」となります。小さな文字で
「ジャン・パウル『巨人』(古見日嘉訳)内容見本小冊子」と添えてあります。
(昨日に検索をかけてみましたら、この内容見本小冊子は、「巨人」の付録ともなって
いたようです。)
 当方は、この内容見本を手にすることがなければ古見日嘉さんという方を知ることも
なかったでありましょう。この内容見本は、ジャン・パウルの翻訳に人生をかけた古見
日嘉さんの追悼文集となっているのでありました。
 目次は、次のようになります。
 古見先生とのイタリア旅行         古川哲
 古見さんの思い出             飯島耕一
 ジャン・パウルのこと           川村二郎 
 古見君とジャン。パウル          国松孝二
 古見日嘉先生の想い出           栗田勇
 ジャン・パウル復興と小説の未来      中村真一郎
 ジャン・パウル最大の力作         相良守
 古見君のこと               城山良彦
 ジャン・パウル古見さん、そしてわたし  鈴木武樹
 キツツキのいる家             種村季弘
 ジャン・パウル略年譜 書誌
 古見日嘉略年譜 書誌
 「巨人」造本体裁案内
 
 国書刊行会40年ということがなければ、古見日嘉さんのことを話題とすることも
なかったのですが、このような本を刊行するというのが国書刊行会であります。
 これの刊行へのいきさつは、城山さんの文章に、次のようにあります。
古見日嘉君が四年前思いがけず急逝するまでもっとも心にかけていたジャン・パウル
代表作『巨人』の翻訳が、昭子未亡人はじめ種村季弘、高本研一、岩田行一など諸兄の
努力により、『国書刊行会』の稀有な好意を得て、いよいよ今度出版の運びになり、これ
ほど喜ばしくまた安堵したことはない。幽冥界を異にする古見君も心からほっとすること
であろう。・・老年にはまだ遠かったがすでに酒仙の面影のあった古見君ために一盞を
挙げて祝意を表わし、この機会に彼がジャン・パウルに傾けた情熱と努力がさらに一層
正当に評価されることを望みたい。」
 古見さんがなくなったのは、1973年53歳でありました。