夏の読書

 こう暑くっては、読書どころでないと聞こえてきそうでありますが、この町は
申し訳ないほど涼しいのでありました。避暑地として有名な軽井沢の最高気温を
見てみましたら30度を超えていましたから、こちらのほうが5度くらいも気温が
低いことです。
 夏というとまとまった休みがあって、その休みを利用してすこし長い目の小説を
読むのがおすすめといわれますが、近年はまとまった休みをとることができなく
なっていることもあり、夏の読書といって記憶に残るものがありません。
 そう思っていたところ、新潮社「波」8月号の巻頭に「八十年がすべて詰まって
いる小説」というインタビューが目にはいってきました。
これは小説家 加賀乙彦さんが取り組んできた長編連作「雲の都」が完結したこと
による記事でありました。

雲の都〈第4部〉幸福の森

雲の都〈第4部〉幸福の森

雲の都〈第5部〉鎮魂の海

雲の都〈第5部〉鎮魂の海

 加賀さんの自伝的な長編小説「永遠の都」シリーズの最初の作品の連載が「新潮」
で始まったのは、1986年1月とあります。作者はもともと「永遠の都」で完結のつ
もりであったとのことですが、是非に続編をということで、「雲の都」シリーズが
始まりました。
 このインタビューでは、次のようにあります。
「書き始めたのは五十五歳のときで、そのときは七十歳までには終わるつもりでした。
結局八十二歳になるまでかかってしまいました。私の八十年の人生がすべて詰まって
いる小説といえます。」
 「永遠の都」は新潮文庫にはいったことで全巻を読むことができたのですが、
「雲の都」シリーズは、ずっと気になっていながら文庫化されることもないことから、
ここにいたるまで未読であります。
今回は、なんとかしなくてはいけないことですが、これにあわせて文庫にならない
のでしょうか。