平凡社つながり

 最近のことでしたか「岩波書店」が社員募集をするときに、応募は紹介状のある者と
条件をつけてしまいましたが、その昔の出版社であれば、問題にもならなかったでしょ
う。
 平凡社などは、昔はさむらいが多くそろっていることで有名でありましたが、その
方々が書いたものを見ましたら、ほとんど紹介による入社でありまして、しかも入社後に
おいても二足のわらじをはき続けるという立派さであります。
 今回、平凡社つながりとしたのは、小林祥一郎さんの「死ぬまで編集者気分」という
本を手にしたことであります。本当は、小林祥一郎、村山恒夫(新宿書房社長)、
石塚純一札幌大学教授 出版文化史)という流れを話題にしたいのでありますが、
これは材料がすくないので、この流れとは違う人たちのものなどから話題をいただき
です。

 まずは、この本の成り立ちからです。
「こういうものを書くきっかけは、かって平凡社にいた石塚純一さんの提案により、日本
編集者学会でした講演である。2010年の11月29日、日本編集者学会の定期セミナー
で、わたしは『私の編集者人生』という題の話をした。一時間半ほどしゃべり、あと三十
分は質問を受けるという予定だったが、いつものように話が横道にそれる。質問抜きで
しゃべっても、用意した原稿の半分くらいのところで時間になった。
 残りの分もふくめて学会の機関誌『エディターシップ』に掲載したいという申し出が
あり、同時にこの集まりに出ていた新宿書房の村山恒夫さんから、このときの話をもとに
何か書かないかという話がでた。村山さんには前から約束をはたしていない負い目がある
ので、すでに下原稿があるという安心感から二つとも気安く引きうけた。」
 小林、村山、石塚というラインは、かって平凡社でともに仕事をしたなかであります。
この本には、巻末に人名と書名の索引がありまして、たいへん便利であります。これを
利用して村山恒夫さんを調べてみますと、本文中には次のようにあります。
「(『エンカルタ』の)たしか三年目の編集から、村山恒夫さんが編集長を引きうけて
くれた。村山さんは平凡社時代、『大百科年鑑』を一緒に立ちあげた仲間である。
その後、紙の出版社である新宿書房の社長をしている彼は、インターネットに関連する
情報にも敏感な好奇心と批判力をもっていた。」
 この本の巻末には、「本書の基本データ」というページがありまして、ここには、
用紙についてのデータにとどまらず、花ぎれ、しおりについての記載や、印刷進行の
担当者名、挟み込みのはがきの印刷所名、DTPの使用OSとアプリケーションの記載まで
あるのでした。
これはなかなか他に見られなくて、さすがに編集者学会のお墨付きであります。
ちなみに編集協力のところには、石塚純一+川平いつ子+広瀬勝芳+加納千砂子とありま
す。
 石塚純一さんには「金尾文淵堂をめぐる人びと」という著書がありますが、それでの
紹介には、「1971年、平凡社に入社。『世界大百科事典』編集部を経て、『イメージ・
リーディング叢書』などの人文書籍の編集に携わる。1997年、平凡社退社。」とありま
した。