ピーチな旅 3

今回は、ほとんど本屋にいくこともなしでありました。これまで、旅行にでて本を
購入しなかったことはなかったと思いますので、これは異例の旅であります。
大阪には二日間ほど滞在したのですが、天王寺区上本町あたりをうろうろとしていた
ことになります。上本町の近鉄百貨店にはちゃんと本屋さんがあったのですが、食堂
街には足を踏み入れたのですが、本屋はそとから眺めただけに終わりました。
 かばんにいれてピーチ便の往復で開いておりましたのは、中村真一郎の「江戸漢詩
でありました。

 このなかに、次のような漢詩がありです。
  青陵、京師ヨリ至ル
 相値歯疎頭禿後 十年世味話甜酸
 女児聞有京華客 半下蘆簾偸眼看

 中村眞一郎さんによる読み下しと解釈です。
「 相ヒ値フ、歯疎頭禿ノ後、十年ノ世味、甜酸(テンサン)ヲ話ス。
  女児、京華ノ客アリト聞キテ、半バ蘆簾ヲ下シテ、眼ヲ偸(ぬす)ミテ看ル

 京都から十年ぶりに訪ねてきた旧友と、お互いに歯が抜け、額の禿げ上がった顔を
眺めあいながら、別れていた間のうれしかったこと悲しかったことを語り合って飽き
ることがない。
 ところが、この家のお嬢さんは江戸娘らしいおきゃんな物見高さから、「京都の
お客さま」が来ていると小耳にはさむと、さぞや二枚目の優男だろうと、簾ごしに
盗み見して、とんだおじいさんだったのでびっくり、という、その孫娘の気配を客の
相手をしながらちやんと気配で判っている老詩人も、やはりおませな小娘を眼にいれ
ても痛くないと思っているのだろう。」
 今回の旅では、十数年ぶりで旧友とあうことができました。おきゃんな娘に見られ
ることはなしでしたが、「相値歯疎頭禿後 十年世味話甜酸」でありました。
 ピーチのおかげで関西が近くなったことを実感の旅であります。