今年のことなど 4

 図ったわけではないのですが、昨年のこの時期にも「理論社」のことを話題として
おりました。昨年は、理論社の破綻を話題にして、今江祥智さんの著作からかっての
理論社の活動について紹介をしたものです。
 http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20101226
 今江さんの文中にある「ぼんぼん 四部作 全一冊本」の編集実務を担当したの
も、伊藤英治さんであるようです。そうなると、今江祥智さんの「幸福の擁護」
みすず書房にも登場するのではないかと思って、この本を取り出してきました。
この「幸福の擁護」には、巻末索引がありまして、すぐに「伊藤英治」さんの登場が
三個所で確認されました。
 そのものずばりで「伊藤英治」さんを紹介する文章がありました。初出は、93年から
95年にかけて毎日新聞大阪版に連載された児童文学関係者の紹介コラムです。
椋鳩十の本(三十六巻)、長崎源之助全集(二十巻)、乙骨淑子(八巻)、古田足日
子どもの本(十四巻)、現代児童文学作家対談(十巻)、現代童話(五巻)、まどさん
誌の本(十六巻)、神沢利子コレクション(五巻)、松谷みよ子の本(十一巻)。
と書けば僅か六行である。しかしこの百十冊余りは、それぞれが大事な集大成である。
これだけの仕事を、伊藤さんは恒人社という小さな編集プロダクションでやってのける。
・・・伊藤さんは、大変な縁の下の力持ちだったのだ。本来ならば児童図書出版社自身
が頑張って担ぎあげ、いや、つくってこなければならなかった重荷を、伊藤さんは
気張って肩代わりしてきた。フリーの編集者や編集プロダクションの数は多いが、どれ
ほどが、ナルホドと頷ける実績をあげたかどうか。だから、伊藤さんの恒人社が果たし
てきた役割を評価し書きとめておきたくなるのである。・・・
 『図書新聞』、『日本児童文学』の編集者として苦闘してきた伊藤さんの粘り腰が、
舞の海みたいに、三役ならぬ大出版社の仕事以上のことをやってのけてきたものか。」  
 もう一個所は「まど・みちお全詩集」に関してのくだりででした。
「全詩集づくりの話を聞いたのは、それからずいぶんとしてからのことだった。それが
理論社の山村さんと恒人社の伊藤さんの提携によるものだと聞いたから、私は心ひそか
に安堵するところがあった。とにかく全詩集の出版を、あの気難しくて完全主義者(だ
と私は思い込んでいる)のまどさんが、おいそれとはOKを出されるはずがない。
しかしまたそこがあの山村さんである。・・・一方の伊藤さんは黒子下積み役を黙々と
持続してきた辛抱我慢に強く骨っぽい編集者である。これは実現するかもしれぬと
思った。実現してほしいと願った。」
 理論社は、大出版社からすれば下請けプロダクションの代表にすぎない伊藤英治
さんを、「まど・みちお全詩集」では編者として表記しているとありました。
そういえば、昨日の「阪田寛夫全詩集」についても、編者として処遇されていました。

まど・みちお全詩集<新訂版>

まど・みちお全詩集<新訂版>