小沢信男著作 56

 小沢信男さんの「あほうどりの唄」についてです。日本キャラバン文庫8とあります
が、これはほとんど自費出版のようなものなのでしょう。
 ウィキペディアに、この本がなかったのは、単に書き落としただけで、小沢信男さん
が掲載するに及ばずといったわけではないでしょう。
「あほうどりの唄」巻末の囲みに小沢さんの「あとがき」があります。
「ずいぶんと我儘な本ができました。
 こどもの頃の文や画を、こんなに収録してしまって、いい気なもんですが、これが私の
文章生活の出発点です。
 近作と読みくらべれば、人間五十年を、私はよほど単純に生きてきた、と思います。
 本人はそれでいいのだけれども、折角の読者各位には、やはりちと薄味で物足りぬか
もしれない。そこで、高梨豊小室等の両氏のご厚意に甘えて”友情出演”を願いま
した。これで本書はグッと引き立ち、主題も際立ち、著者としてはいうことなしです。」
 高梨豊さんは、写真を担当して、表紙からはじまってあちこちに素晴らしい写真が
はいっています。小室さんは、小沢さんの詩「あほうどりの唄」に曲をつけているので
した。
 小沢さんの「本の立ち話」の冒頭におかれた「頂門の一針」は、「縮刷版赤とんぼ別
巻」に寄稿されたものですが、かっての「赤れんが」に掲載された「雪とえれべえたあ」
という作品は、「赤とんぼ 1947年5月号」に続いて「あほうどりの唄」に採録されて
いるのでした。
「本の立ち話」では「雪とえれべえたあ」という詩について、つぎのように書いています。
「『赤とんぼ』全三十一冊を復刻する。ついては印税五五七円を支払う、という知らせに
仰天する。
同誌の1947(昭和22)年五月号所載の童詩「雪とえれべえたあ」は、なにをかくそう
小生満十九歳の折りの投稿作でありまして、八十一歳のこの期におよんで、旧悪、ほど
でもないが稚拙な習作が、まさか露顕しようとは!」