みすず「読書アンケート」特集の既刊分をランダムに手にしてみますと、いろいろと、
いまころになって発見があったりします。はじめて目にしたときにはよくわかっていな
かったことが、時間がたってすこしは理解できるようになったものかもしれませんです。
それはさておき、2011年の特集で目についたコメントからの引用です。
コメントを寄せているのは、細川周平さん(近代日本音楽史)であります。
( この方が最初の著書を発表されたときに新聞読書欄に写真が掲載されていましたが、
毛糸の帽子にジーンズのオーバーオールを着ていたのではなかったでしょうか。
大学の理学部卒とかいう経歴にも驚かされました。)
「11月に久世光彦の『マイ・ベスト・ソング』のある章を小泉今日子が朗読し、関連の
歌を浜田真理子が歌う催しを見た。『海ゆかば』に大粒の涙。この歌に対する公定の
アレルギーを作りだした戦後民主主義、それがほころびてきたようだ。その一週間後に
は、ビルマのアーロン収容所で作詞作曲され、演芸会などで歌われた歌のコンサートが
あった。
所内で木材とワイヤー線をくすねて作られたヴァイオリンとギターが『ふるさと』
『椰子の実』を奏でると涙。京都・滋賀から徴兵された戦友と遺族の集う姿に六十五年
の重み。」
涙もろくなったのは、細川さんの年齢のせいかもしれませんが、久世さんの「マイ・
ラスト・ソング」(細川さんは「マイ・ベスト・ソング」と記していますが、これは
「ラスト・ソング」でしょう。)で印象に残るのは、戦時中の歌について取り上げている
ことであります。
当方は、もちろん戦後生まれでありますからして、「海ゆかば」という歌が戦時中にどう
いう使われかたをしたかはよくわかっておりませんでした。ラジオを通じて頻繁に聞か
されたということが、戦後の日本では白眼視されることになったのですが、もともとこの
楽曲に問題があるわけではなりません。もちろん作曲家の信時潔にもです。
戦意高揚などに使われた曲を、冷静になって聴くことができる時代になったとすれば、
どのような歌であったのか、聴くような機会があってもいいのにと思うことです。
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今日子、久世朋子さんの三人がやっているのですが、この三人ともが久世さんによる
エッセイ「海ゆかば」にこだわっています。
奥様の朋子さんは、「久世がいちばん残したいと思ってドラマにも使った曲は『海ゆ
かば』じゃないかしら」と発言しています。
さらに朋子さんは、「小泉今日子さんは2008年11月に浜田真理子さんと組んで、
『マイ・ラスト・ソング』の素晴らしいコンサートを開いてくださったのよね。小泉さん
がエッセイを朗読なさって、浜田さんが歌とピアノで。」と発言しています。
細川さんが11月といっているのは、この08年11月でしょうか。それとも10年11月にも
同じ催しがあったのでしょうか。