ことしは辛卯 2

 自分の干支が卯であるせいか、当方はうさぎが好きであります。なかには自分の
干支が嫌いなんて方もいるでしょうが、午年の方には、ウィスキーはホワイトホースで、
ネクタイも馬の絵のものにこだわるという人がいることを聞いたことがあります。
うさぎをあしらったネクタイを何本か購入したことがありますが、それはうさこちゃん
ではありませんです。
 タウン誌「うえの」には、小澤俊夫さんと瀬木慎一さんによる「うさぎ」についての
文章が掲載されています。どちらもたいへん参考になりました。
 瀬木さんの「描かれた兎」の書き出しは、次のようになります。
「十二支になかで、兎はなぜか虎と龍という強豪なものに挟まれ、如何にもひ弱に、また
可憐にも見える。
 ウサギと日本語では一言で言うが、ヨーロッパ語では、英語で二分されているように、
Rabbit(飼い兎)とHare(野兎)とは明確に区別されている。
 それではその本性はどのように見られてきた。第一に多産であるところから、ギリシャ
神話では淫乱なヴィーナスの象徴だった。反対に、淫欲に対する勝利、つまり純潔感から
キリスト教では聖母に関係づけられるとはいえ、ギリシャ神話の方が先行している。
 男性に関しては、世上、小心や臆病を表わし、そこから『脱兎のごとく」という俗な
表現がいつしか発生したにちがいない。」
 これに続いて「鳥獣戯画」に描かれた兎を解読し、それから野生の兎への考察へと
むかっていくのでありました。
 卯年ならではの文章でありまして、「ウサギの神話学」というのはおもしろそうと思わ
せるものでした。
 「脱兎のごとく」というと、その昔に日産車は「ダットサン」と呼ばれたのですが、
このダットサンというのは、脱兎にちなんでいるのでありました。逆輸入のピック
アップトラックにダットサンと英文字ではいっているのをご覧になったかたもいるで
しょう。
 兎からイメージされる男性というのは「小心や臆病」であるとのことですが、卯年
の男性でもマッチョな人はいるでしょうが、寅年の人よりは「小心、臆病」な人が
多いかもしれないですね。(干支で人の性格等を語るのは、血液型とか星座占いと
同じで、科学的な根拠はまったくなしであります。)