一年の計は

 元旦の新聞は、出版各社の年賀広告がそろって掲載されるのですが、印象に残るもの
はあったでしょうか。
 新潮社は、自社から初めての小説集をだした「爆笑問題」の太田光さんをとりあげて、
電子書籍の可能性は追求するものの、会社としては紙の本が基本にあると宣言しています。
(なかのほうでは全面広告で新潮文庫でシリーズ化している佐伯泰英上橋菜穂子
塩野七生畠中恵の作品をプッシュしています。シリーズ三昧というのは、NHKFM
三昧にならったものか、はたまた回転すしのメニューからでありますか。)
 それと軒をならべるかっこうとなっている文藝春秋社は、海外に住まいの読者むけに
文藝春秋 海外電子版」を2月10日から配信すると告知しています。電子版の配信は
海外のみですと断っていますが、海外だけ配信というのは、具体的にどうすることで
しょう。海外のプロバイダーとの契約の場合だけ配信可能となるような仕組みをつくった
ようにも思えますが、そんなことは可能でしょうか。この広告では、いかにも海外でしか
配信を受けることができないように見えるところに首をひねりました。( 海外の人が、
国内に戻って、そのまま配信を受けようとしたら、強制的に契約が解除されるとか、
まさか。このような書き方となるのは、国内の書店への配慮でありましょう。)
 岩波書店は、「日本語 語感の辞典」を大きく取り上げていました。このような本が
でているのは、わかっておりませんでした。大好評とあるので、きっと売れているので
しょう。こんど書店で手にしてみることにします。辞書好きの井上ひさしさんが健在で
ありましたら、どのように評するでありましょうか。(かって岩波国語辞典第三版がでた
時に、この辞典の画期的なところを、いくつかの言葉を例にひいて紹介していたことが
ありました。)
 岩波の2011年新企画には、これはと思うものがなくて、これから追加で発表されるも
のを楽しみにすることにしましょう。(岩波文庫から「失われた時を求めて」が刊行
されるというのは、考えようによっては元旦の広告に掲載となってもいいような事件
ですが、これを知ったのは、刊行の直前でありますから、お楽しみはまだこれからだ
です。)
 講談社は創業100周年記念出版 書き下ろし100冊が終わったとあって、その100冊の
書名を掲載しています。昨年の元旦広告で、この企画が発表されたのですが、どの
ようなものがはいっているのかわかりませんでした。見事に100冊刊行したのには拍手
ですが、今のところ一冊も購入するにいたっていません。買おうかどうしようかと
迷っている作品がこのシリーズのものでした。これに関しては行きつけの本屋にずっと
場違いのようにならんでいて、当方が購入せずして誰が買うと思わせるものでして、
今年の一冊目の購書は、これにいたしましょうか。
 一番インパクトがあったのは、集英社の「戦争と文学」の発刊をつげるものですが、
65年2月14日のベトナム戦争に従軍記者として参加していた「開高健」のものです。
これには、「アメリカ軍部隊に帯同中、銃撃戦に巻き込まれた直後に撮影」と解説が
あるのですが、誠に残念なこと撮影者の名前がありません。この写真は大変有名なもの
でありますので、カメラマンの名前が記されていてもよかったのにと思いました。
最近は戦場カメラマンなる人がメディアで話題になっているだけに、なおのことであり
ます。
 たしか、この時は二人ともに死を覚悟して、お互いにとっておこうといって写した
ものの一枚です。開高健がカメラマンを写したほうも公開されていたと思います。
( 開高健記念館というページで、この写真をみることができました。ちなみに
カメラマンは秋元啓一さんです。
 http://kaiko.jp/kinenkan/exh2005-vet/theday.html )