本とコンピュータ 5

本とコンピュータ」が創刊されたのは、97年夏でありましたが、この頃の
パソコンとの付き合いはどうなっていたでしょうか。
 当方が最初に自分のものとしたパソコンは弟から譲ってもらったNEC98シリーズ
のものでありました。最近に98というと、ほとんどがウィンドウズ98のことであり
まして、かっての日本での主流であった98パソコン( これぞ元祖ガラパゴス)は、
話題にもならなくなっています。あの時代のパソコンのスペックを見ますと、これで
何ができたのかと思ってしまいます。
 ウィンドウズマシンの一台目は、96年に購入したダイナブック(98に対して
DOS-Vといわれたもの)ですが、それ以降ずいぶんとパソコンは購入したものの、
新品で購入したのは、この一台のみで、値段もいま考えるとずいぶんと高かった。
 この時代のパソコンは、主に仕事につかうものでパソコン通信ニフティーサーブ
に加入はしたものの、これは電話代が気になってほとんどはまることはなしでした。
 ウィンドウズ95で、はじめてパソコンにふれるようになった世代には、「本と
コンピュータ」で展開される未来の本の話は、ちんぷんであったでしょう。
 たとえば97年夏 創刊号にある「オンライン書店は本の流通を変えるか」という
コラムからの引用です。
「最近インターネット上で『オンライン書店』が盛んだ。すでにパソコン通信で実績
のある八重洲ブックセンターや、独自の書誌データベースを持つ丸善などに加え、昨年
10月には紀伊国屋書店が開始、大御所がそろいぶみといった様相だ。」
 これが書き出しになります。パソコン通信と電話接続でのインターネットの世界です。
パソコン通信が主流で、この時代にインターネットプロバイダーと契約していた人は、
ごくごくわずかでありました。もちろん、アマゾンは影も形もありません。
「本の中身=テキストは、もともと非常にデジタルデータ化しやすいもの。『紙の本』
にこだわらず、エキスパンドブックのようにパソコンで読む本にしたり、いや、いっそ
中身のテキストだけを売っても良いではないか。コンピュータ方面から出版業界に向け
て、そんなラブコールもあるのだ。・・・
『書きたい人間と読みたい人間のボーイ・ミーッ・ガールを取り持ちたい』この当たり
前すぎる理念がいつのまにか置き去りされている出版業界へ、ラジカルにアプローチ
を仕掛ける彼ら。あらゆるテキストのデジタル化とその普及をビジネスとして成立させ
る基盤作りが究極の目的だ。特に中小出版社にとってこうした方向性は、かなり示唆的
な動きといえる。」
 97年に、このようにいっているのですから、先の見える人には、見えていたのであり
ましょう。この時期になって、はじめて聞くような顔をする出版界の人がいるとすれば、
それはとぼけているか勉強不足のどちらかでありましょう。
 97年夏の創刊号表紙は、以下のものです。