丸谷才一さんが「綜合雑誌」と書いているのを見ていましたら、筑摩書房からでて
いた「展望」を手にしたくなりました。ひどく保存状態がよろしくないのですが、当方の
ところにも数冊の「展望」があったはずと、台所の地下にある室の段ボールをあさって
みました。
とりあえず、二冊見つかりました。もっと古いものもあったはずですが、それはどうも
処分したようです。
学生の時に、「展望」で宮尾登美子さんの出世作(?)となった「櫂」を眼にした時
に、同じ下宿に住む高知出身の先輩男性に、この作品は如何と勧めたことがありました。
これは72年くらいのことであるようです。彼は、これに描かれている土佐の風物がよろ
しといっていたように思います。当時は、ほとんど知られていなかったヤマモモがよく登
場して、それが、当方には印象に残っています。
本日見つかった一冊は、75年8月号です。
この表紙にある寄稿一覧をみても、綜合雑誌に求められる「もっと広い視野、正統的な
態度で文明一般を扱う」ということはうかがえるのではないでしょうか。
これにあるほかにも、興味深いものがたくさんあります。
「展望」の巻末の連載小説は、臼井吉見さんの指定席のようになっていますが、この
「春一番」という作品は連載ではありません。臼井さんのものでは「安曇野」がほぼ十年
くらいにわたって連載が続いたはずです。いま調べて見ますと64年からはじまって74年
に完結したとありました。
巻頭におかれている対談は鶴見俊輔さんと吉本隆明さんのものですが、いまから35年
前のものですから、当然のことながら、掲載されているお二人の写真は若い。
この時期、宮尾登美子さんは「陽暉楼」を連載していまして、この号では連載八回目
とあります。