国語の教科書22

 筑摩書房の現代国語の教科書では、その後に当方が影響を受けることになった
林達夫長谷川四郎松田道雄などのことを初めて知ることになりました。
林達夫は、「ファーブル昆虫記」の翻訳者としてでありました。長谷川四郎
「ウスリー紀行」の翻訳です。これが後年になって、黒澤明の映画作品「デルスー・
ウザーラ」になるとは、その時は思ってもいませんでした。長谷川四郎さんは、
この作品を翻訳していた時代のことを「デルスー時代」という小説にまとめて
います。
 ベルコールの「海の沈黙」という作品を知ったのも、この教科書でありました。
語学の天才「河野与一」の翻訳は、読みにくいという評がありますが、この作品に
関しては、そのような印象を持ちませんでした。

海の沈黙 星への歩み (岩波文庫 赤 565-1)

海の沈黙 星への歩み (岩波文庫 赤 565-1)

 今は、このように岩波文庫にはいっていますが、当方が手にしたのは、これの
元版でありまして、あの時代の岩波書店の薄くて、ソフトカバーで簡単な箱に
はいっていたものは、いまでも当方の好みであります。
教科書のベルコールの紹介には、次のようにありました。
「はじめ画家として知られていたが、1940年6月、フランスがナチの軍隊に占領
された時、『深夜叢書』をひそかに出版し、自国の解放のために尽力した。
『海の沈黙』は『深夜叢書』の第一巻として出版された。」
「深夜叢書」というのを見て、最初はこれがなんのことかよくわかりませんでした。
新書という言葉は知っておりましたが、叢書にはなじみがありませんでした。
この言葉を知った翌年くらいに、日本にも「深夜叢書社」というミニ出版社がある
のを知りました。ここの社主は齋藤慎爾さんですが、当時は山形から東京にでてきた
ばかりの頃で、中井英夫さんの所有(?)するアパートの一室で出版をしていたので
ありました。 
 3年生の教科書の最後におかれているのは、臼井吉見の「三つの本 卒業してゆく
諸君へ」という文章です。この教科書の編集にあたって、臼井吉見さんは大変力を
いれたものと思われますが、最後は自らの書き下ろしの文章で締める形となって
います。
 臼井吉見さんが取り上げた「三つの本」というのは、次のものです。
 青柳瑞穂  「ささやかな日本発掘」
 佐藤藤三郎 「25歳になりました」
 増田小夜  「芸者」