筑摩書房の現代国語の教科書では、その後に当方が影響を受けることになった
林達夫、長谷川四郎、松田道雄などのことを初めて知ることになりました。
林達夫は、「ファーブル昆虫記」の翻訳者としてでありました。長谷川四郎は
「ウスリー紀行」の翻訳です。これが後年になって、黒澤明の映画作品「デルスー・
ウザーラ」になるとは、その時は思ってもいませんでした。長谷川四郎さんは、
この作品を翻訳していた時代のことを「デルスー時代」という小説にまとめて
います。
ベルコールの「海の沈黙」という作品を知ったのも、この教科書でありました。
語学の天才「河野与一」の翻訳は、読みにくいという評がありますが、この作品に
関しては、そのような印象を持ちませんでした。
- 作者: ヴェルコール,河野与一,加藤周一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1973/02/16
- メディア: 文庫
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元版でありまして、あの時代の岩波書店の薄くて、ソフトカバーで簡単な箱に
はいっていたものは、いまでも当方の好みであります。
教科書のベルコールの紹介には、次のようにありました。
「はじめ画家として知られていたが、1940年6月、フランスがナチの軍隊に占領
された時、『深夜叢書』をひそかに出版し、自国の解放のために尽力した。
『海の沈黙』は『深夜叢書』の第一巻として出版された。」
「深夜叢書」というのを見て、最初はこれがなんのことかよくわかりませんでした。
新書という言葉は知っておりましたが、叢書にはなじみがありませんでした。
この言葉を知った翌年くらいに、日本にも「深夜叢書社」というミニ出版社がある
のを知りました。ここの社主は齋藤慎爾さんですが、当時は山形から東京にでてきた
ばかりの頃で、中井英夫さんの所有(?)するアパートの一室で出版をしていたので
ありました。
3年生の教科書の最後におかれているのは、臼井吉見の「三つの本 卒業してゆく
諸君へ」という文章です。この教科書の編集にあたって、臼井吉見さんは大変力を
いれたものと思われますが、最後は自らの書き下ろしの文章で締める形となって
います。
臼井吉見さんが取り上げた「三つの本」というのは、次のものです。
青柳瑞穂 「ささやかな日本発掘」
佐藤藤三郎 「25歳になりました」
増田小夜 「芸者」