本をならべる 3

  雑誌「BRUTUS」の最新号の特集「本が人をつくる」を見ましたら、アニメ映画
監督である「細田守」さんが「映画の中の本棚」ということで語っています。
映画の中での本棚ということであれば、田中裕子さんが主演した「いつか読書する日
という作品に主人公の本棚がうつるのですが、これのシナリオ本では主人公が好きな
書名とそれへのコメントなどがあるのでした。(これについては、過去にふれたことが
ありました。http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20080813 )
 自分でない誰かをイメージして、その人らしい本棚をつくるというのは、なかなか
楽しいことであるのかもしれません。
映画監督さんも、同じようなことを思っているのでしょう。
アニメ監督の細田守さんは、本が大好きということですが、昨年の作品「サマー
ウォーズ」には、「大屋敷の納戸にある本棚という設定で、ものすごい蔵書量の本棚が
登場する。」とあります。
 この本棚について、細田さんのコメントです。
「 誰それの本棚だとその人の思想が見えるけど、あの書庫は大きな屋敷の納戸にある
本棚。この作品にでてきた中年のオバサンが幼い頃に読んだ本も登場する。大きな家だ
と保存できるので今では絶版になった本もある。その家で暮した、世代もいろいろな
大家族みんなが読んだ本がたくさん収納されているんです。」
 蔵書というにふさわしいものは、すくなくても刊行から数十年たっていて、親子代々
で読み継いだものというものでしょうか。日本では、都会に住む人々は、本を保存する
ことが難しくなっていますので、親子で同じ本を読むにしても、同一本で読んだなんて
ことはほとんどなくなっているのではないでしょうか。
 この納戸にある本棚が映しだされるシーンの時に、『BRUTUS」の編集スタッフが
読み取れる分の背表紙をリストアップしてあります。リストは、赤字、青字、黒字の
三色で表示されていますが、赤字の本は架空の本、青字は存在しない架空の装幀本だ
そうです。
 このリストを見て気づいたのは、「モモ」を初めとするエンデの本が三冊もあること
と、斉藤惇夫さんガンバの三部作がならんでいることでしょうか。
一瞬のうちにすぎてしまうシーンの背景にも、このようなこだわりがあることに、本好
きとしてはうれしくなってしまうのでした。

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