本をならべる。

 「考える人」31号「あこがれの老年時代」には、神沢利子さんの書斎の写真が掲載さ
れています。写真には、次の説明文がありました。
「2階の書斎。本棚には文学から動物学、文化人類学まで幅広いジャンルの本がなら
ぶ。部屋のあちこちに、北方民族ギリヤークやオロッコの人たちの民芸品、美しい蝋燭
などが。『くまの子ウーフ』のぬいぐるみもいる。」
 書棚の前に神沢さんがいすにすわっているのですが、その背後の書棚には文学書など
がならんでいるものの、書名は判然といたしません。文化人類学のものもあるというの
で、めがねを外して、目を近づけるのですが、いくらも読み取ることができません。
説明文にもありますように、北方民族への関心からの本が多くならんでいるようです。
平凡社からでています「知里真志保全集」の背文字を見ることができました。
神沢さんは、すでに85歳でありますので、この書棚に落ち着くまでは、ずいぶんと本
の整理をしたのであろうと思いつつ、すっきりとした書棚の写真を見たのであります。
 まだ、この域には達しないことと思いながら、「BRUTUS」の「本が人をつくる。」
という特集を見ましたら、こちらには森村泰昌さんの書棚写真がありました。芸術家
Mさんこと森村さんは、当方と生年が一緒でありますので、この方の書棚には共通する
ものがあるかもしれません。
 数多くの書棚のなかから、三つの棚を取り上げています。
A の棚の解説には「童話作家を目指していたこともありました。」とあります。
ここの中心はドリトル先生シリーズです。岩波と福音館の児童書がならんでいます。
アーサー・ランサム全集の一冊が目を引きます。朝日新聞元旦の岩波書店の広告には、
児童書のシリーズ化されているものがずらっとならんでいたのですが、そのなかに
アーサー・ランサムのものがなく、これは残念でありました。「ツバメ号」のシリーズ
は、岩波少年文庫にぜひいれていただきたいものです。

ツバメ号とアマゾン号 (アーサー・ランサム全集 (1))

ツバメ号とアマゾン号 (アーサー・ランサム全集 (1))

B の棚の解説には「文学が必須の教養だった時代の必読書」とあります。
ここには、ル・クレジオカポーティサリンジャーなどの作品がならんでいます。
サリンジャーの「ライ麦畑」のとなりにヘッセ「車輪の下」(人文書院のヘッセ著作集
版)がならんでいるのは、意図したのものでしょう。
Cの棚の解説には、「最後の知的エリートたちの時代」とあります。
 ここには、レヴィ・ストロースロラン・バルトフロイトサルトルなどのものが
ありました。
 当方も読んではいませんが、魔除けのように、ここにあるような本を購入して書棚に
さしていたことがあります。森村さんにならって、このような区分で本を並べることが
できるようですが、残念なこと書棚に余裕がなしで、まずしなくてはいけないことは、
書棚に収まるくらいまで本を整理することのようです。