これから読む本4

 当方と佐藤正午さんの世界を結ぶ光文社文庫のエッセイ集の元版が岩波書店
いうのは予想外でありました。佐藤正午さんの小説は、ほかの版元からもでて
いるのですが、エッセイ集に関しては岩波書店編集者 坂本政謙の独壇場であり
まして、このような編集者に出会った作家さんは幸せなことであります。
 「ありのすさび」の巻末にある坂本さんの解説を昨日に引用をしましたが、
本日も続きを見てみることにします。
 佐藤正午さんの仕事場には、「百貨店の大きな四つの紙袋が、これまた大きな
ダンボール箱に入って僕が来るのを待っていたのです。それぞれの紙袋のなかには、
無造作に破かれたエッセイの掲載頁が大小さまざま、びっしり入り乱れてつまって
いました。」とあります。
四つの紙袋から、三つだけをダンボールにいれて会社に送ったのだそうです。
「 東京にもどった僕は、バラバラになっているページをA4判の大きさにそろえて
すべてコピーにとり、字数をかぞえメモして、おおまかなジャンル分けをしつつ、
どうまとめようかと考えながら読み進むことになりました。
 それはなにものにも代えがたい、とても楽しい作業でした。しかし、とりあえず、
一冊目のエッセイ集は出せたとしても、つづけて二冊目をだせるかどうかはその
売れ行き次第です。正午ファンの僕としては、とにかく全部を一冊にまとめて
しまう、ということをまず考えてみましたが、四百字詰めの原稿用紙に換算すると
千枚を超える分量です。さすがにそれはあきらめざるをえませんでした。
残された道は、一冊に収めるためにどれを選び、なにをはずすかということになり
ます。・・・
 計算上では、これだけで(「小説家の四季」と「ありのすさび」)当初予定して
いた三百ページに近づいていたのですけれども、この一冊でおしまい、という可能
性も大きい。ここは編集者のわがままで、単独で発表されたもののなかから、とり
わけ『佐藤正午』テイストだと僕が思うものいくつかを収録させてもらうことにしま
した。」
 幸いにして、この佐藤正午さんにとって十二年ぶりのエッセイ集は、マスコミにも
好意的に取り上げられて、次につながることになりました。