昭和の雑文家番付3

 作家が書く文章のどのくらいが単行本となるのでしょうか。たくさん書く
人ほど雑誌等に掲載はされるものの、それっきりになるような気がしますが、
書いた文章のほとんど単行本となっているなんて人もいるのでありましょうね。
 本となるかどうかは、売れるかどうかで決まるわけですから、たくさんうれない
作家のものでありましたら、オンデマンドにでもしてもらわなくては、雑誌に掲載
された文章を単行本の中でみることはできないでしょう。
本の雑誌」11月号にある特集の坪内祐三さんの発言です。
「 文章が粗いのが雑文ではなくて、ジャンルが決まってないってことが雑文なん
だから、そういう意味で文章がすごく上手な雑文家って、ぼくは小沢信男さん。
 前頭九枚目か十枚目に小沢さんをおきたい。前頭十枚目前後ってすごく重要なん
ですよ。壁なんです。ベテランの人がそこにいて、下からあがってきた新鋭がぶち
あたる壁になるわけ。」
 小沢信男さんの、いま新刊として書店で入手可能な本は、どのくらいあるので
しょう。最近の話題作もありますが、まずは、以下のものくらいでしょうか。

東京骨灰紀行

東京骨灰紀行

通り過ぎた人々

通り過ぎた人々

裸の大将一代記―山下清の見た夢 (ちくま文庫)

裸の大将一代記―山下清の見た夢 (ちくま文庫)

悲願千人斬の女

悲願千人斬の女

 このなかに坪内さんがいうところの「ジャンルが決まっていない」雑文集(藝の
見本帳)はありますでしょうか。
当方の見る所、あまり執筆の依頼が多くないせいもあって、最近は得意ジャンル
以外のものは目にすることがなくなっています。むしろお若いころのほうが、
映画評とかルポルタージュを発表しているのですが、そのほとんどが本にはならず
で終っています。
 単行本となっているものでは、せめて「若きマチュの悩み」(創樹社)くらいを
容易に手にすることができなくては、小沢さんのどこに雑文家を認めることができる
のかということになりますね。