旧正月とおらんだ正月2 

 旧正月を話題にしていましたら、テレビ番組でも、それにあわせるかのように
お正月ものをやっておりました。とはいっても旧暦では、まだ大晦日にもなって
いないのではありますが。
 本日の夜には、最近の日本でもお正月というとこれという感じになっている
ウィーンフィルの「ニューイヤーコンサート」の再放送がBSでありました。
1月1日の夜に生中継で放送されるのですが、これを編集してのものでした。
いかにもおめでたくて、これを見るだけで正月気分にひたることができるもの
です。このコンサートの最後は、ハプスブルグ家の軍隊行進曲である「ラディツキー」
ですが、いつもここでは盛り上がるのですが、今回の指揮者であるバレンボイム
サービス精神にあふれていました。
 これまでウィーンフィルのステージでは女性をみることはほとんどなかったので
ありますが、今回は、コンサートマスターであるキュッヒルさんのとなりに、
美しい女性の姿がありました。そのほかチェロパートにも女性が。そのほか
東洋系のような男性のメンバーがうつっていて、いよいよウィーンフィルにも
時代の波が押し寄せているのでありましょうか。
 さて、森銑三さんの「おらんだ正月」のことであります。小生の手元にあるのは、
富山房百科文庫でありまして、岩波文庫版は買い逃しているのでしょうが、購入
リストでは確認ができておりません。富山房百科文庫があまりにすばらしいので、
岩波文庫を購入しようという気にならなかったのかもしれません。
 富山房百科文庫版がでた昭和53年(78年)には、まだ森銑三さんが存命で
ありまして、この本には「後記」をよせています。
「『おらんだ正月』は、昭和13年に、富山房百科文庫の一冊として公にした私の
旧著です。内容は、江戸時代の科学者、実学者達の小伝52編を収めており、それ
より先に、雑誌『子供の科学』に連載したものに、さらに幾編かを書足して一部の
書としたのでした。・・・
 もともと年の行かぬ諸君の読物としてこしらえたので、私としては、ただ少しでも
平易な、興味をもって読んでもらうことのできる文章を書こうと、その点に骨を折った
というにとどまります。・・・
 なお、私の二十台には、期間は短かったのですが、小学校の代用教員をしていた
経験がありますので、そのときに接した児童諸君を念頭におきながら、その子供たち
に話かけるつめりで書いたことでした。それからこちら私も年をとり、昔の子供達も
皆老人と呼ばれる年齢に入っているのですから感慨無量です。」
 最初に、これが出版されて70年が経過しています。富山房百科文庫での復刊と
なってからでも30年です。
 森銑三さんは書誌学者さんでありましたが、生粋の学者さんではなくて、書物の
職人さんが学識ゆたかとなって学者をはるかにこえた存在となっていました。
小生が知るにいたったのは中央公論社から普及版の著作集がでたことであります。
各巻1200円という値段でありまして、なんとか数冊購入することができたので
ありますが、あの時代はこのようなものでも、普及版がでるほど売れたのであり
ますから、よい時代でありました。