自由時間 75年12月号

 雑誌「自由時間」は、商売としては、まったくうまくいかなかったもので
ありますが、この雑誌に掲載されている広告をみますと、同人誌のような
趣であります。ほとんど出版関係の広告しかないのですが、そんななかに
新宿ゴールデン街のオアシス ナベサン」という店のものがあります。
メンバーの行きつけの店であったのでしょうが、この大きさで、いくら
とっていたのでありましょうか。
 この雑誌の広告には、長谷川四郎さんをはじめとする出版広告があって、
これをみていますと、当時を様子をしのぶようになるものです。
小生、ひいきにしている「創樹社」の広告ラインナップにあるのは、次の
ものです。
「アジア学の展開のために」竹内好
「知恵の悲しみ」わがヴァリエテ 長谷川四郎
「ジプシー歌集」 ロルカ  長谷川四郎
「若きマチュの悩み」 わがヴァリエテ 小沢信男
「 小説 在日朝鮮人史 」 金達樹 
「 冒険と日和見」 花田清輝
 
 当時、いかに小生が創樹社本を気に入っていたかというと、この上に引いた
リストにある「アジア学」についての一冊をのぞいて購入していたことからも
わかります。この時代が、創樹社にとっての全盛期でしょうね。
 朔人社からは「虹の上をとぶ船」という八戸港中学校のこどもたちが
制作した版画物語が刊行されていましたが、これの広告もありました。
この作品の一枚は、後年になって、宮崎駿のアニメ映画「魔女の宅急便」の
なかで、ヒロインの友達の絵描きさんが取り組んでいる作品として画面に
登場するのでした。
 宮崎さんは、この映画のなかで松任谷由実の音楽を採用するのですが、
なにかのおりにユーミンさんは、、さすがに宮崎駿さんは、自分の曲を
採用するとは目が高いといっていたのでありますが、小生は、この八戸の
子どもたちのたちの作品を登場させるのが、すごいと思ったのであります。
 この朔人社というのは、「自由時間」の編集もしている高頭祥八さんが
やっていた会社のようですが、この同じ広告には、小沢信男さんの
「詩集 赤面申告」の広告もあるのでした。思えば、ずいぶんとこの時代は
長谷川四郎スクールにとってもよかったことです。