自由時間「意外対談」 

 「自由時間」というのは、75年から76年にかけてわずか5号を
だしておわってしまった雑誌であります。版元は土曜美術社で、長谷川
四郎責任編集というのが売りでありました。長谷川四郎さんが、当時
そんなに知名度が高いわけではなく、責任編集と刷り込んだからといって
売れ行きがのびるという物ではなかったでしょう。
 長谷川四郎スクールには、とても貴重なコレクターズアイテムのように
思いますが、創刊号は巻頭に深沢七郎長谷川四郎の「意外対談」という
のがおかれていて、これは当時深沢が住んでいた「ラブミー農場」での
ものです。
 この二人の発言には、次のようなところがありです。

深沢「 やっぱり歌うたいのなんか頭どうかしているんじゃないですか。
 作家なんかもどうかしているっていうけど、作家なんてのは芸術家でも
 一番どうかしてない。作家だって異常だっていわれる人のほうが、
 よくみればその人の生活程度守って、ほんとの自分だけの生活をして
 いると、それが相手に具合よくないから異常だとか、あいつは変わって
 いるとか。」
長谷川「現代日本の作家、そんなに変わった人もいないでしょう。」
深沢「変だというなら、三島由起夫なんか一番へんじゃないですか。」
長谷川「ちょっとへんなスタンドプレーだよ、あれ。みられることを
 意識して、じぶんではかっこいいつもり。いつでも自分を大きく
 みせようとしたんだ。アレは小男なんだよ。写真とらせるときでも
 したからとらせて、まあ三島なんて興味ないんだ。単なる美文さ。」

 長谷川さんは、当時の人としては相当に大柄でありましたから、
三島は小男なんていえるのですが、「じぶんを大きくみせようとした」と
いうのは、なるほどであります。
 これでいきますと、長谷川さんは、自分を小さくみえようとしたと
いえるのかもしれません。
 長谷川四郎スクールの特徴の一つは、自分を大きくみせないという
ことかもしれません。