思いこみと偏見4

 5歳で敗戦を経験した片岡義男さんは、5歳になる前から「ペーパーバック」
の蒐集をはじめるのでありました。もともとは、読むよりは、積み上げて山を
つくることに関心があったようです。いつから英語の読み書きができるように
なったのかと思いますが、次のようにあります。
「14歳になった頃にはすでにいっぱしの買い手だった。買えることが面白くて
買うのだから、どれを買うか選んだりはせず、店にあるものすべて買う。
どの古書店の店主とも僕は顔なじみとなった。・・・
どこの古書店に入っても、そこにはペーパーブックが置いてあった。売れそうにも
ない雰囲気なのだが、しかしそれは置いてあった。本だから。という理由だろう。
 店主にとってペーパーバックは本としてかなり低い位置のもの、あるいは無視
したいものだったはずだが、本であることは確かである。」
 中学生の年齢で、古本屋の常連で、店主と顔なじみとなるというのは、どういう
ことでありますかな。
 さすがにこの時には、本を購入するのは、山をつくるのが目的ではなかったようで
あります。