ブックオフの収穫2

 先日、ブックオフでの購入した本について記していますが、本日の本は
辻邦生さんの「風塵の街から」であります。辻邦生さん(正しい名前の表記は、
しんにゅうの点がふたつとなるのですが、これは異字でありまして、普通では
このような文字は用意されていません。)はたいへん多作でありまして、
小説だけでも、いったいどのくらいの枚数を書いているのでしょうか。
新潮社から没後に全集というのがでておりますが、とうてい、あれで作品の
すべてが収録されているとは思えないのでありました。(別に、この作品が
もれているという確たるものはないのですが。)
 辻邦生さんは、連作のようなしかけが好みのようで、中央公論社からでた
「雷鳴の聞える午後」にはじまるシリーズとか、河出からの「パリの手記」
シリーズ、そして新潮社から箱入りで全エッセーということで、雰囲気を
あわせて5冊となってまとまっています。
 本日に取り上げた「風塵の街から」は、新潮社からの全エッセーの一冊と
なります。この全エッセーの、ほかの4冊のタイトルは、以下のようになって
います。
 「海辺の墓地から」 1961から1970 
 「北の森から」   1971から1972
 「霧の廃墟から」  1971から1973 
 「季節の宴から」  1974から1975

 辻邦生さんの小説を読むようになったのは、篠田一士さんが「辻邦生作品」と
いう河出からの最初の作品集の内容見本に。「夏の砦」の推薦文を寄せていたのを
みたからでありました。ちょうど、この推薦文をみたころに「背教者ユリアヌス」が
出版されて、当時としてはけっこう高い値段の小説でありましたが、その時に
一緒に書店にいった知人からお金を借りて、思い切って購入した記憶があります。
( 72年10月刊行とありますので、そのころのことです。)
このユリアヌス以降は、ほとんどの小説を購入して読もうと思っているので
ありますが、購入してはいるものの、いまだ読めていないものが多いのは
残念であります。
 小説とくらべるとエッセイ集は、ほとんど購入していませんので、今頃に
なって、ブックオフで目についたら購入しているようなわけでです。
 本日は、この「風塵の街から」の抜き書きです。
「 中島敦の作品に出会ったのは、戦後、はじめて三巻本の『中島敦全集』が
でたときであった。のちに篠田一士と話をしていたおり、天才的な多読家である
彼が、すでに『弟子』や「李陵』を発表した当時『中央公論』で読んでいたのを
知り、驚いたことがある。私の場合は、たしか『展望』に臼井さんだったかが
紹介を書いていて、それで『全集』を読んだのだと思う。
 当時、私は松本の旧制高等学校におり、北杜夫やフランス文学の山路昭などと、
学校にもでないで、勝手気ままな生活を送り、文学に熱中していた。現在の私の
文学的な基礎をつくったのは、この乱読多読時代だkら、こうした放埒な生活も、
それなりに意味があったが、出席日数不足で落第の憂き目にあった。」