林達夫とイタリア

「栗カメの散歩漫歩」(http://d.hatena.ne.jp/kurisu2/20080303)にイタリア書房から
創業50周年記念出版に田之倉稔著『林達夫・回想のイタリア旅行』刊行予定とありました。
林達夫さんが74歳のときにイタリア旅行を決意してそれに同行した田之倉稔さんによるもの
ですが、林達夫さんが亡くなったのは、84年4月25日ですから、すでに24年も前の
ことになります。
 外交官の息子として幼少時にシアトルで過ごし、語学にたけて洋学派であった林さんは、
その後まったく海外にでることなく、著作集を刊行してからはじめてヨーロッパにでかけた
のでした。演劇研究家の田之倉さんが、ドライバー兼ガイドで林さんの旅行をサポートした
のは承知しておりましたが、まさかこの時の紀行文が一冊にまとまって眼にすることができ
るとはです。
 その版元になる「イタリア書房」なんて聞いたこともないやと思いつつ、林達夫さんの
関連本を開いておりましたら、そこにはっきりと記されていたのでした。興味があって、
購入したものですが、さっぽり読めていなかったのに、いつ役にたつかわからないもので
あります。
 本日に話題にするのは、高橋英夫「わが林達夫」小沢書店 98年8月刊 であります。

「『イタリア書房に寄ってきたのだよ』といいながら、黒い鞄をあけて一冊また一冊と
 本をとりだしてゆく。どうも大きな鞄だなあと思っていたが、その中身がこれであった
 のかと頷きながらみていた。別に本の説明・紹介はされなかったし、見る方もただ次々と
 本がでてくる”魔法”に心を奪われていた。」 

 これは63年くらいのことで、大きな黒い鞄から本を取り出すのは林達夫さんであり
まして、魔法に心を奪われていたのは、高橋英夫さんでした。
 この文章「林達夫とイタリア」というのは、イタリア書房からでている「イタリア図書」の
94年11月号に掲載されたものでした。 
単行本に収録されたときに、これに次の小文が添えられていました。
「 林達夫のご贔屓がイタリアの図書を輸入販売するイタリア書房であった。同書房が発行
している『イタリア図書』の12号(94年11月)にこの一文を書いた。
 私は以前武野音大にドイツ語を教えにいっていたとき、イタリア語の専任だった小林
あきら氏と知り合ったが、小林氏はイタリア書房と関係があったようで、氏からこのテーマで
書いてほしいと依頼された。『イタリア図書』には田之倉稔氏の『林達夫さんとイタリアを
旅したときのこと』という連載も載っていて興味深かった。」

 田之倉さんが、この時に連載していて、単行本になるまでに12年もかかっているのであり
ますね。高橋英夫さんが「林達夫ご贔屓」というほどの店でありますから、50周年にあたり
これを本にするのは大変意味深いことと思うのでした。