草思社といえば4 

 草思社が破綻して、不良在庫が古本市場にどっとぞっき扱いででるのでは
ないかと思いますが、そのなかで岩田宏さんの本がみつかれば、それは買いで
すよというのが、どうも、小生のブログの趣旨であるようです。

渡り歩き

渡り歩き

 草思社からの岩田宏小笠原豊樹)さんのものでは、「渡り歩き」というのが、
最後の一冊になったと思われますが、この本の帯には、次のようにありました。
「 これぞ、読書。
 本からほんへ思いのままに渡り歩く。
 忘れられた作家へ、誰もしらない傑作へ、
 詩人・作家がたどる名著耽読の軌跡。 」

 この本の冒頭におかれているのは、「幻灯機」という文章ですが、これの書き
出しは、つぎのようになります。
「 せっかく買った本を、なぜ読まないのか。読むあてのない本を、どうして私蔵
 (死蔵)するのか。・・いくたび自問してもなかなか確実な答えはでてこない。
 いつかは読むだろうとか、それはただの怠惰だとかいうのは、あやふやな応えで
 しかないと思う。」

 この文章は、購入してから四十年もたってから、気になっていた本を読むに
いたったということを書いているのですが、「購書積読」がならいとなっている
身には、購入してから数十年も経って、よむこともあるということに勇気づけられる
のでした。岩田さんは、32年生まれで、小生よりも20年ほど年長です。
「 1950年代の終わり頃、東京のどこかの古本屋(場所も、店の名も完璧に
忘れてしまった)から私の手元へと、一冊の洋書のありかが移った。それから
40年間、歳月に耐え、数えるのも面倒なほど繰り返された引っ越しにも耐えて、
この本は私の住居に逼塞しつづけた。」
 この本は、ランダムハウス社からでた「スペインの町の生と死」というもので、
著者はエリオット・ポールというひと。
これを購入することになったのは、この本が36年7月から9月にかけてのスペイン
内戦について書いているからだそうです。
なぜスペイン内戦かというと、「32年生まれの私個人には、自分の誕生前後の
ことを知りたいという抜きがたい欲望があったと思う。」とあります。 
  
「 私は幼い頃の事件や事情を知りたいというより、そのころの空気そのものを
 取り入れたい。そうすることによって、私の生はより充実するだろう。できれば
 誕生以前の何年間かの空気も吸い込んで、生をいっそうふくらませたい。という
 わけで、私の興味と関心は1920年代と30年代に集中していた。こういう
 考え方は現在もほとんど変わっていない。」
 
 長い前書き部分のみを引用しましたが、このあとに、このスペイン内戦についての
著作についての紹介とコメントに移るのでしたが、それは割愛。
 自分が生まれた頃の時代の雰囲気を知るために、その時代の本を読むというのは
ありですが、小生にとっての具体的な一冊とはなんでしょうか。あとは、その時代の
映画を見るなんてこともありでしょうね。