つまみ読み

 週末に食料品を購入するためにいったスーパーにある本屋で、文庫本を
購入しました。
 ちょっと面倒な文庫本は、このスーパーの本屋には入荷しないのですが、
このこじんまりとした本屋がなくなれば、このスーパーにくる楽しみの一つが
なくなりますので、ここで買えるものは、ここで買うようにしています。
 買い物が終わって、レジでの支払いが終わるまで、出入り口近くにある
椅子等に腰掛けて、購入した本をつまみ読みすると、楽しくて、これなら
読み通すことができるぞと思うのでした。(なのに、自宅に戻りますと、
しばらく手にすることもなくなったりして。)
 先日の購入書は、次のものでありました。

 

須賀敦子全集〈第3巻〉 (河出文庫)

須賀敦子全集〈第3巻〉 (河出文庫)

 「 先帝たちが築いた武のローマを、ギリシャ文明への憧れの模型につくり
 かえるハドリアヌス帝の、『たよりない、いとおしい、たましい』の内面の
 遍歴。あるいは、そのおなじ時間を生きようとして、傷つき、ぼろぼろに
 なって旅をつづけ、旅に死ぬ『黒の過程』の主人公ゼノン。虚空をまさぐって
 歩く人間の時間。精神の孤独な遍歴。それはまた、世紀末の時間を生きる
 私たちにとってこのうえなくふさわしいだけでなく、ヨーロッパ精神をつくり
 あげた、あの比類ない個への傾倒と隣りあわすものに思えた。」
 ( 須賀敦子ユルスナールの小さな白い家」より )

 「黒の過程」はいまから35年もまえに読んだように思います。まだ時間が
 たっぷりあったし、体力と気力もつづきましたので、これを読み通すことが
 できたように思います。もう一度よみたいと思いながら、はたせておりません。
 この作品においても、つまみ読みなんてできるでしょうか。
  
 

旅立ち 遠い崖1 アーネスト・サトウ日記抄 (朝日文庫 (は29-1))

旅立ち 遠い崖1 アーネスト・サトウ日記抄 (朝日文庫 (は29-1))

 これまでずっと気になっていた萩原延壽「遠い崖」でありますが、とうとう
文庫となって、スーパーの本屋にもならんでいました。まだ一冊買っただけで
ありますから、さきはながい。どう考えても、最近の読書のスピードでは、
月2冊販売される文庫刊行の早さについていけそうもありません。
 これも冒頭のところの数行を読みましたら、この先10数冊もあることを
忘れて、これを購入してよんでやるぞと思わせたのです。
「 わたしがよく通ったのは、ラウンド・ルームと呼ばれる円形の閲覧室で
 あったが、壁際の書棚にならんでいる参考書のなかから、たとえばサトウが
 日本で活躍していたころのイギリスの『外務省年鑑』を取り出し、サトウの
 上司や同僚であった駐日イギリス公使館員や領事館員の名前、年俸、略歴などを
 ながめているだけでも、空想はしきりにふくれあがり、時間は気づかぬうちに
 過ぎていった。」