玄人ごのみ

 玄人ごのみから何を思い浮かべますでしょうね。映画でしたら、渋い脇役で
ありましょうか。けっして主人公をくってしまうことはないが、存在感の
ある人。その人がでているだけで映画をみたいと思うような気分にさせる
役者。すこしメジャーな存在になってしまいますが、石橋蓮司さんや、すこし
前までの香川照之さんなどはそうでしょう。(最近のひとでは思い当たりま
せんが、やはり小劇場の人たちがテレビ画面に登場すると、ひきつけられて
名前をチェックしてしまいます。)
 小説家でも、派手ではなくて、渋い作品をだしている人は玄人ごのみであるなと
思ってしまうのですが、いつのまにか風向きがかわって、作風はそのままで
あるにもかかわらず人気がでてしまったりします。こうかいたときに念頭にある
のは堀江敏幸さんでありまして、こんなに売れてしまうと玄人ごのみとはいえなく
なりますね。
 本日は、ベテランの歌い手さんである「酒井俊さん」のハウスライブを聴いて
きましたが、この歌い手さんなどは、まさに玄人ごのみのかたでありまして、
うまいとしかいいようのないのですが、必要以上に売れようとしないせいか
ほとんどメジャーになりません。小生がはじめてこの歌い手さんのライブを
聞いてから30年が経過しますが、はじめはジャズを中心にうたっていましたが、
ここ10年くらいは、客が好む曲ではなく、自分が歌いたい曲を、とにかく
これでもかというくらいに歌いこむのであります。
 こんな人がいて、このような曲があるのかと、はじめて耳にするものが多いの
ですが、どれをうたっても自分のものにしてしまうのでした。
数年前に、「満月の夕」という曲でレコード大賞のなにかの賞を受けたのですが、
彼女の地道な活動を、なんとか応援しなくてはということが、この賞となった
ものでしょう。そうした意味からは、彼女は玄人ごのみであるのでしょう。